ワンマン経営者の“暴走”の軌跡を追う(2/4 ページ)

» 2011年03月04日 08時04分 公開
[産経新聞]
アーバンエステート元会長、永井昭四郎容疑者の自宅に家宅捜索に入る県警の捜査員。県警はさらなる捜査を進めている=1月4日夕、川口市東内野

 アーバン社の捜査でも、乗り越えるべきハードルがいくつも待ち受けていた。

 まず、アーバン社旧経営陣が、いったいいつの時点で経営破綻状態だと認識していたのかをはっきりさせねばならない。「ウチの会社はもうつぶれる。もう住宅は建てられない」と旧経営陣が認識した後に顧客から集めたカネでないと、顧客から「だまし取った」カネとはいえないからだ。

 さらに、資材を発注するなど、アーバン社が積極的に住宅を建てようとした形跡があったかどうかもつぶす必要がある。こうした点について埼玉県警は徹底的に帳簿を調査、関係者からの聞き取りも行った。

 その結果、少なくとも経営破綻直前の21年3月時点で旧経営陣が財務状況を把握しており、住宅の着工が不可能でありながら顧客に契約金を前払いさせていたと判断。また、元会長らが、「資金繰り会議」と称した経理に関する打ち合わせを頻繁に開催していたとみられることなども浮かび上がった。

 埼玉県警は年明け早々、詐欺容疑で旧経営陣らの逮捕に踏み切った。さいたま地検は1月25日、詐欺罪で実質的経営者の元会長、永井昭四郎容疑者(61)と元取締役兼営業部長の三井晴子容疑者(57)を起訴。埼玉県警は詐欺容疑で2人を再逮捕して取り調べを続けている。

急成長から破綻、「資産隠し」疑惑も

 登記簿などによると、アーバンエステートは平成14年9月に設立された。「格安で高品質な注文住宅」を売りに急速に事業を拡大していき、21年には首都圏を中心に約40カ所の事業所を展開するまでに成長した。

 だが、すでに経営には暗雲が立ちこめていた。被害対策弁護団によると、アーバン社は19年12月期には営業利益を7600万円と公表。だが、経営破綻後の破産管財人の調査によって、実際には19年12月期は十数億円、20年12月期には約30億円の赤字が出ていたことが判明した。被害対策弁護団は「格安の戦略により、アーバン社の原価率は同業他社より非常に高かった。1棟当たり数百万円程度しか利益は出ず、販売管理費を差し引くと赤字になるのは目に見えていた」と指摘する。

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