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» 2011年03月10日 12時03分 公開

NHK記者が語る、“無縁社会”の正体(3/4 ページ)

[土肥義則,Business Media 誠]

親族からも厄介者扱い

 大田区のセンターでは「声をあげられない高齢者をつなげていこう」という趣旨で、高齢者にキーホルダーを配っている。そのキーホルダーには「何かあった場合、ここに連絡をください」と本人の名前と電話番号が書かれている。

 そして取材をしていく中で、そのキーホルダーだけが見つかる出来事があった。キーホルダーは基本的に身に着けておくものだが、なぜかそれだけが落ちていた。落ちていた場所は、海のそばの公園。キーホルダーの持ち主が住んでいるアパートに足を運んでみたが、もぬけの殻だった。

 キーホルダーの持ち主はどこに行ってしまったのだろうか。センターはその人の弟に連絡をとったが、弟さんからは「私たちには関係のないことですから」という返事が返ってきた。キーホルダーを落とした人は、親族から完全に厄介者扱いをされていたのだ。

 さらに取材を進めていくと、この人はキーホルダーを作ったときに「自分は年金をもらっているが、生活に困っている」と言っていた。それを聞いた担当者は生活保護の窓口を紹介したが、その人が生活保護の手続きをした形跡はなかった。

 キーホルダーが見つかる3カ月ほど前に、北海道にいる弟さんに「自分は生活に困っているので、一緒に暮らさないか」と頼んでいた。しかし弟さんの生活も楽ではなく、さらに長い間離れて暮らしてきたので、すぐに受け入れることができなかった。生活に苦しんでいる兄がやって来る――。といってすぐに「はい。分かりました」と心地よく受け入れる人は少ないのではないだろうか。

 それでも弟さんはアパートを用意し、兄に「ここで住んでみては」と言った。しかし男は東京に戻ってしまった。兄弟が連絡をとった最後の瞬間でもあった。

『消えた高齢者 “無縁社会”の闇』(出典:NHK)

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