技術革新のスピードが上がり、経済のグローバル化も進む中、日夜、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き、どんなことに注目して、事業を運営しているのでしょうか。「リーダーは眠らない」では、さまざまな企業や団体のトップに登場していただき、業界の“今”を語ってもらいます。
インタビュアーは戦略経営に詳しい嶋田淑之氏。徹底した聞き取りを通して、リーダーの心の内に鋭く迫ります。
ここ数年、“100円寿司”と呼ばれる低価格路線の大手回転寿司チェーンが、大幅にシェアを伸ばしている。長期不況下の日本にあって、多くの生活者が緊縮財政を余儀なくされているが、それでも、「寿司を食べたい」という思いは多くの日本人に共通のものだろう。低価格の回転寿司は、そんな人々のニーズを満たしてくれる存在だ。
とはいえ、もし懐具合に余裕ができれば、「多少値が張っても、本格的なおいしい寿司を食べたい」というのが、ホンネではないだろうか?
しかし、客単価が万単位となるような都心の超一流店にはとても行けない。そんな庶民の思いの、1つの回答となるのが“高級回転寿司”である。高級感のあるネタを、手の届く料金で堪能できるのである。
そんな高級回転寿司の代表的チェーンの1つに、石川県金沢市発祥の「金沢まいもん寿司」がある。まだ、創業から10年ほどだが、『おとなの週末2009年4月号』の回転寿司ランキングで1位になるなど評価は高く、金沢まいもん寿司を展開するエムアンドケイ代表取締役の木下孝治さんは、そうした実績から2010年1月に設立された日本回転寿司協会の会長ともなっている。
地元・金沢に本店・支店を置きつつ、たまプラーザ(横浜市青葉区)、港南台(横浜市港南区)にも出店している金沢まいもん寿司(店名の異なるグループ店が金沢、名古屋、二子玉川に出店)。今回は、関東進出の中心店である金沢まいもん寿司たまプラーザ店(横浜市青葉区)を訪ね、木下孝治さんにその成功の鍵と回転寿司業界の未来についてお話を伺った。
東急田園都市線たまプラーザ駅前の繁華街を抜け、住宅街に差し掛かる辺り、通り沿いの一角に、目指す店はあった。堂々たる和風建築だ。中に入ると、赤、黒、金を基調とした高級感のある内装と、広くてゆったりとしたぜいたくな空間の使い方に思わず目を奪われる。
週末の、ランチタイムが始まって間もない時間帯に到着したのだが、店内を眺めると、メニュー名を書いたカードが皿の上に置かれ、コンベアに乗って次々と回ってくるものの、寿司が乗った皿は必ずしも多くない。むしろ、寿司職人との1対1のコミュニケーションの中で、好みの寿司を握ってもらうケースが多いようだ。
私と編集H氏も担当の職人の勧めに従い、高級魚の「のどぐろ(アカムツ)」、富山の「白海老」、金沢の「がす海老」「テイ貝」、そして名物「寒ぶり」をはじめ、日本海の冬の幸を中心に、普段なかなか口にできない高級なネタを味わった。
しかし、こうして職人が握ってもらうなら、わざわざコンベアを使って回転寿司にする必要はないように思えるのだが……。
「いえ、回転寿司にすることで、お客さまが入りやすくなるのです。また、入店して着席した瞬間は高級なネタの数々に驚きますが、実際に目で見ることで食欲もわき、ついついたくさん食べてしまうものなのです。コンベアを使うことによって“衝動取り”を誘発して、通常の1.5倍くらいの量を食べていただいていると確認しています。ディスプレイ効果ですね」と木下さんは明言する。
同社が、顧客の心理を読んだ巧みな戦略を展開してきたであろうことが察せられる話である。
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