宋文洲が語る、東電の原発事故とダメな会社の共通点(1/3 ページ)

» 2011年03月30日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

宋文洲(そう・ぶんしゅう)氏のプロフィール

1963年、中国山東省栄成市出身。

1992年にソフトブレーンを創業。2000年12月に東証マザーズに上場。成人後に来日した外国人では初のケースとなる。2004年経済界大賞・青年経営者賞を受賞。2005年6月1日には東証1部上場を果たした。

2006年8月31日ソフトブレーン会長退任。経営から退き、同社マネージメント・アドバイザーに就任。2010年から日本エル・シー・エーの特別顧問を務める。主な著書に『やっぱり変だよ日本の営業』などがある。


 東北関東大震災の被害を受け、さまざまな不安を感じている人が多いだろう。コンサルタント事業などを手掛けるソフトブレーンを創業し、現在日本エル・シー・エーの特別顧問を務める宋文洲(そう・ぶんしゅう)氏は、震災後の日本社会をどのように見ているのか。また日本経済の今後を占ってもらった。

※この記事は3月28日に行われた「“2011年型”営業組織と経営者のあり方」の講演録をまとめたものです。

2011年の前半は厳しい

宋文洲氏

宋:東北関東大震災が発生したが、これからはモノの仕入れ値が高くなるだろう。売り上げは業界によって違うが、1割ほどダウンするのではないだろうか。福島第1原発の処理がすぐに終われば「次に、次に」と考える人は増えるはず。しかし事故処理が早く終わらなければ、「新しいことをしよう!」という前向きな気持ちにはなかなかなれない。気分的に経済が落ち込んでいく可能性が高い。

 原発事故がなければ、日本の2011年のGDPはそれほど悪くなかったはず。しかし前半(1〜6月)はかなり厳しくなるだろう。前半は原材料の調達が難しくなり、お客の購買意欲はなかなか上がらない。そして売り上げが下がり、利益率が悪くなる。

 売り上げの増加が見込めないので、経営者は利益を確保する努力が必要だ。例えばムダな営業はしないこと。飛行機に乗って、電車に乗って、遠いところで商談をするのは控えるべき。もし海外進出を考えていても、まずは震災後に落ち込んだ分野に会社のエネルギーを注入した方がいいだろう。そして今年の後半になってから、海外進出した方がいいのではないだろうか。

 先週の土曜日(3月26日)、私は関西に足を運んだ。そして大阪に拠点を置く、ある会社の社長がこう言っていた。「今年9月に、米国への視察旅行を予定していたが、取りやめることにした」と。こうした過剰な自粛ムードは、経済にとって“二次災害”と言っていい。

 日本経済はグローバル化の中で動いているが、原発問題が解決しない限り、外国人は日本に戻ってこないだろう。日本政府には「原発問題はもう大丈夫だ!」と訴えてほしいが、今のやり方では難しい。現在、原子炉を必死になって冷やしているが、「冷却が終わるのには3年ほどかかる」といった指摘もある。先の見えない事態に、日本国民はものすごく不安を感じている。日本政府は「この方針でいく!」というビジョンを示すべきだ。

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