烏賀陽:「官邸」のことにものすごく詳しい人間、「財界」にものすごい人脈をもつ人間が、ワシントン総局に配属される。英語を話すことができない記者が、議会の取材を始めたりするんですよ。そんなことをするよりも米国議会に詳しい人を、現地で採用するほうがいい。
窪田:なぜ全国紙はあまり現地採用をしないのでしょうか。僕は岐阜支局に配属されたわけですが、岐阜のことは全く知らなかったんですよ(涙)。地元紙には岐阜で20年も取材しているような記者がいるのに、全国紙は他の地域から赴任した若手記者が2〜3年ほど取材して、異動になる。非効率ですよね。
もちろん人脈の引継ぎはありますが、たかだかしれている。前任者から重要人物やネタ元が紹介される場合もありますが、こっちは岐阜に来るのは初めてだし、よく分からない。取材相手に「どこで待ち合わせしましょうか?」と聞かれても「よく分からないんで、とりあえず駅前にしましょうか?」といった返事になる(笑)。そういったレベルから始まるんですよ。
岐阜のことを全くしらない僕よりも、もっと詳しい人に任せた方がいいと思う。岐阜で生まれ育ち、自然に人脈を持っていて、これからも岐阜で骨をうずめる――そんな人が取材し記事を書く。その方が読者にとってもいい情報が提供できるに決まっている。
烏賀陽:僕は大学を卒業し、三重県の津支局に配属されました。考えてみてください。数日前まで大学生だった人間が書いた記事を、三重県の読者は読まされるのですよ。支局の構成はベテランでも5年生。こんな“ちびっ子”が書いた記事ばかり読まされるんだから、三重県の読者に申し訳ない。
新聞というのはユニバーサルサービスであるはずなのに、東京・大阪・名古屋以外で売られている読者は質の低いものを読まされているんですよ。値段は同じなのに、何でこんな製品の質のばらつきが許されるのか。
窪田:確かに質の低い新聞を読まされているかもしれない。だって僕が配属された岐阜支局には、岐阜出身の記者なんていませんでしたから(笑)。
烏賀陽:ハハハ。そらアカンなあ。
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