アニメで“お金”と“未来”の話を描く――ノイタミナ『C』中村健治監督インタビュー(1/4 ページ)

» 2011年04月14日 08時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 フジテレビの木曜深夜で、数々のヒットアニメを送り出してきた“ノイタミナ”枠。「アニメの常識を覆したい」という制作スタッフの思いから、「animation」を逆さ読みした名称が付けられたその枠からは、『ハチミツとクローバー』『のだめカンタービレ』『東のエデン』『東京マグニチュード8.0』など、多くのヒット作品が生み出されている。

 そんなノイタミナ枠で4月14日から毎週木曜24時45分(初回放送のみ25時5分)から放送されるのが、「お金と未来」をテーマにしたオリジナルアニメ『C』だ。経済学部に通う主人公が、自分の未来の可能性を担保として貸し出されたお金をもとに、取引というバトルに身を投じていく……という物語である。

 近年、『カイジ』『LIAR GAME』などお金をテーマとした作品が注目を集めているが、全体として現実と離れたものをテーマにすることが多いアニメでは異色の話。『C』はどのような思いのもとに制作されているのか、中村健治監督(41)に尋ねた。

『C』の中村健治監督

C

主人公の余賀公磨は都内の経済学部に通う大学生。幼い頃に父が蒸発、母も病死し、母方の叔母に育てられた彼の夢は、公務員になりマイホームを持ち、平凡に暮らすこと。そんなある日、公麿の前に怪しい男が現れ、「あなたの未来の可能性を担保に、お金をお貸しします。そのお金を、あなたの才覚で運用してみませんか?」と誘う。戸惑い恐れながらも、男に案内されてたどり着いたのが"金融街"。そこで公麿はアントレプレナー(起業家・プレイヤー)となり、「真朱」というアセットとともに、日々繰り広げられている「取引(=バトル)」と「投資」というゲームに勝ち続けなくてはならないことを知る……。

フジテレビ「ノイタミナ」で4月14日から毎週木曜24時45分に放送(初回は25時5分から)。関西テレビは4月19日から毎週火曜25時58分〜、東海テレビは4月21日から毎週木曜26時5分〜。


世の中にすばらしい人がたくさんいることに感動した

――なぜお金をテーマにしたアニメを作ることになったのですか。

中村 『C』の企画が立ち上がったのはリーマンショック後の2010年1月くらいの時期で、当時は不景気の絶頂だったんです。世の中がかなり暗くて、電車に乗っていても人身事故でよく電車が止まったりするような。

 今は不況が当たり前になってきて、痛みというよりは日常に近付いてきているのですが、当時は急速に世の中が悪くなっていたので、その変化にみんな苦しんでいました。「もう日本はダメなんじゃないか」と極端な人はそういうことを言い始めたりしていた時期です。

 最初はお金ではなく、経済に絞ったネタにしようと思っていたんですね。『C』よりもっと軽いものを考えていて、「世界中をまたにかける経済バトルみたいなものを作れないかな」と。

 企画を練るに当たっては、まずネタがないと作れないので、取材をすることにしました。普段メディアで名前を出して記事などを書かれている方たちは責任が生じるので、データがそろっていないことについてキレのあることを言いづらい、分かっていても表では言わないことがあるんじゃないかと考えて、オフレコの取材なら、いろんなことを聞けるのではないかと甘い予測をして始めました。

 当時、メディアで専門家や論客が出演して、国の行く末を語るといったことが、よく行われていました。僕は正直、みなさんがそれぞれの立場で自分の主張をしているのを見て「いろんなことがごちゃごちゃしているな」と思っていました。みんな自分の守備範囲で分かることは言っているのですが、全部のものを並べて比べて、「これが妥当だろう」と話している人がいるかどうか分からなかったのです。

 メディア嫌いで新聞やテレビには出ていないけど、この人が正しいという人に、出会えるかもしれないとも想像していましたが、そういう甘い見込みのもとに取材を始めたら、「そんな人は世の中にいない」ということが続ければ続けるほど分かってくるわけなんですけどね(笑)。

――どのように取材を進めていきましたか?

中村 最初は文献レベルですが、お金の歴史を調べました。中学生〜高校生レベルの話だと思うのですが、お金の成り立ちや、機能が時代によって変わっていることなどを理解して、「次はお金に詳しい人の話を聞こう」ということになりました。

 僕らはお金や経済に関しては素人なのでどの意見や立場が正しいのか分かりません。僕らの意見があるわけでもないので、それを強みとして多様な立場や意見の方に幅広く当たって初歩から教えていただこうと、アポイントを取りお話をうかがったのです。

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