転職試験の舞台裏吉田典史の時事日想(3/4 ページ)

» 2011年04月22日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

現場主導の採用は混乱だらけ?

 私は中途採用試験は現場の責任者である、本部長や部長、副部長、課長、マネージャーらが進めていくことは理にかなっていると思う。成果主義が浸透し、責任者たちには一定のノルマ=責任が与えられている。経営陣が現場の責任者に厳しい結果を求めるならば、当然、彼らに人事権を与え、優秀な人を採用できるようにしていくことが必要になる。

 問題はここからである。現場主導の採用はもっともらしいのだが、私が観察していると、「欲しい人材」があいまいであったりする。例えば、課長、マネージャーが「こういう人材が必要」と言っても、部長、副部長のところで、それとは違った人材が内定を得ることはある。つまり、部署の中で管理職らの権限と責任、役割分担があいまいであり、建前の「欲しい人材」になり、本当のそれにはならないことがあるのだ。

 私が8年ほど前に勤務した会社の例を挙げよう。その部署は、ソフト開発をする部署(部員は6人)だった。課長(40代前半)は、30代後半で課長補佐レベルの仕事ができる人を「欲しい人材」として考えていた。ところが、中途採用試験をしようとする前に、部長や担当役員の意向で、なぜか、50代後半の男性社員で部長レベルの人が「欲しい人材」になった。

 結局、大手出版社をリストラされた50代後半の男性社員が入社してきた。ところが、彼は現場の責任者であるはずの課長の考えや指示に従わない。その都度、反論をする。課長は、それらを受け入れなかった。2人は、週に1回はぶつかり合っていた。半年後には確執が他の部員に悪影響を与え、部署が組織として機能していなかった。3年後に、50代後半の男性社員は追い出された。一説には「年収1200万円を超える」と言われていただけに、会社からすると「高すぎる買い物」だったのかもしれない。

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