会見での64ページにわたる熱いプレゼンの内容を要約してみよう。
原子力保安院は、震災のちょうど1年前、「40年を迎える福島第一原発は、あと20年稼働できる」という技術評価書を出した。すでに世界平均の倍なのに、さらに20年。その結果が事故。審査は厳密だったのか。
ピークは1980年代半ば、その後先進国では原発から自然エネルギーへの転換が加速。
発電コストが比較的安いと言われる原発。しかし、発電コストには処理費用も事故費用も含まれない。そもそも原発事業者の公式申請書類によると、発電コストは1キロワットアワーあたり15円前後で分布している。一体誰が1キロワットアワーあたり5〜6円という数字を作ったのか?
アメリカでは太陽光発電と原子力発電のコストは、補助金の助けもあって2010年で“クロスオーバー(逆転)”。「このことを誰か知っていましたか?」と孫さんは会場の記者に尋ねた。100人以上いる記者の中、手が上がったのは1人だけ。もちろん私も知らなかった。
みんな政府の「原子力こそ日本の将来」という声を信じていた。リスクだけでなく、経済損失もありうるのに。
3月11日には歴史のイタズラがあった。当日「午前」に閣議決定された法案の中に「再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法案」があった。太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーを電気事業者が買い取る仕組みだ。立法化されれば、買い取りの筋道ができる。震災数時間前に自然エネルギー法案を閣議決定していたとは、運命のイタズラなのか警鐘なのか。
孫さんは文句を言うだけではなく、“脱原発の自然エネルギー財団”を設立し、個人資産10億円を投じる。世界から100人の科学者を招き、再生可能エネルギーの研究発表やエネルギー政策の提言をまとめるという。「これまで原発は推進でも反対でもなかった、ただ事実を知らなかった。知ってしまった以上、行動しないわけにはいかない。行動しないのは子どもたち、後々の人びとに対して罪だ」と語った。
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