続・Twitterはコミュニケーション革命なんかじゃない遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(2/3 ページ)

» 2011年06月01日 06時53分 公開
[遠藤 諭,アスキー総合研究所]
アスキー総研

 アスキー総研で行った『Twitter利用実態調査』(参照リンク、PDF)の結果を見ていて気になるのは、やはりネットワークとしてのTwitterだった。ユーザーの平均フォロー人数は184人、平均フォロワー数(フォローされている人数)は173人。1日の平均つぶやき数は約10回で、Twitterの接触時間は約3時間にもなる。つぶやく数の割に接触時間が長く、つぶやくよりも圧倒的に読んでいることが分かる。

Twitterのネットワークとしての性質を調べたくて、私が知りたいと思った4つの情報のうち3つは、なんとTwitterの個々人のホーム画面に表示されていた。Twitterの本質が、人と情報のネットワークであることを象徴しているとも言える

 ユーザーが3時間で読める文字量は、仮に1分間400文字として、1時間で2万4000文字、新書なら1冊読めてしまう可能性もある。ひとことでいえば、Twitterで「21世紀型活字中毒」になっている人が少なくないということである。この文字と時間の消費は、キンドル上陸やアップルの電子書籍リーダー上陸ばかりを騒いでいる場合ではないのではないか?

 このようにいうと、いままでだってネット上に文字はたくさんあったのに、なぜTwitterだけ「21世紀型活字中毒」になってしまうのか? と指摘されそうだ。

 事実、世界中のサーバは、すでに気の遠くなるような量の文字であふれている。グーグルは現在、15億ページ程度を索引化しているといわれるが、インターネットには「深層」と呼ばれるものがあり、同社は2008年7月に「1兆個のページを見つけた」と言ったそうだ(『Google PageRankの数理』エイミー・N・ラングヴィル/カール・D・マイヤー著、共立出版刊)。

 なぜ、Twitterによって新しい時代の活字中毒ともいうべきものが生じているのかということに関しては、ネットワークを抜きには考えられない。

Twitterのフォロー関係を可視化できる「mensionmap」を使うと、誰とどの程度つながっているのかが一目で分かる。一画面に表示できるのは2次のつながりまでだが、それぞれのユーザーをクリックすると、その先につながるユーザーも見ることができる

 前回のコラム(編注:2010年1月5日掲載のオリジナル原稿)について、私のTwitter上でのつぶやきが、どんなふうにRT(ReTweet=そのまま伝聞)されていったかを追ってみた。すると、最初につぶやいた「Twitterはコミュニケーション革命なんかじゃない」という文字列を含んだつぶやきが373件、記事のURLを含んだつぶやきは484件見つかった。

 さらに、Twitterのネットワークに上でRTされた様子を追っていくと、61回、50回、44回、30回、22回……など、1つの短縮URLが、伝聞によって何度も使われていることが分かる。一方、1回もRTされない単独のつぶやきは、全つぶやきの15%ほどにあたる73個だった(Twitter検索+簡単なプログラムによる)。

 このでたらめさ加減は、まさに、スモールワールド・ネットワークを思わせるものがある。パプア・ニューギニアのホタルは、お尻の光の強いホタルや光の弱いホタル、ヨコを向いているホタルや離れたところにいるホタルがいて、はじめてスモールワールド・ネットワークが成立する。同じように、仕事の関係、趣味の関係、知らない人や有名人など、さまざまな距離感があるのがTwitterだからだ。

 「21世紀型活字中毒」が生じた理由として、このネットワークによる情報のばらつきが、ほどよい脳みそのマッサージになっているからである――などと仮説を立ててみたくなる。

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