マツダが目指す「究極の内燃機関」実現の第一歩SKYACTIVエンジン開発者に聞く(1/4 ページ)

» 2011年06月09日 14時00分 公開
[岡田大助,Business Media 誠]

 「モーターも使わず、ガソリンエンジンだけでリッター30キロ?」――ここ数年、マツダのクルマづくりで注目を集めていた新技術「SKYACTIV TECHNOLOGY」が、いよいよデビューする。第1弾に選ばれたのは、コンパクトカーの「デミオ」。国内で22万台を販売する現行モデルに、ガソリンエンジン「SKYACTIV-G 1.3」を搭載するモデルが追加される。

「『マツダのクルマづくりの哲学である“走る楽しさ”を捨てて、妥協してまでリッター30キロという数字を出したい』というつもりはまったくありません。『マツダらしいクルマを作りましたね。よく探すとカタログの隅の方にリッター30キロって書いてありますね』ぐらいでいいんじゃないかな(笑)」

 こう語るのは、SKYACTIV エンジンの開発を指揮した人見光夫氏(同社執行役員 パワートレイン開発本部長)だ。SKYACTIV TECHNOLOGYによって、マツダのクルマづくりの哲学がどのように変化するのか、そして新しいデミオはどのように変わったのかを聞いた。

人見光夫氏 マツダ執行役員 パワートレイン開発本部長の人見光夫氏とSKYACTIV-Gのカットモデル

マツダの進化戦略はまったく変わっていない

 マツダのポリシーといえば、テレビCMでもおなじみとなった「Zoom-Zoom」「走る歓び」だ。2007年ごろからは、これに「優れた環境・安全性能」が加わり「サステイナブルZoom-Zoom」にアップデートされている。

 具体的なクルマの進化としては、「ビルディングブロック戦略」を掲げている。ステップ1は、アクセラやプレマシーに搭載されたアイドリングストップ技術「i-stop」、ステップ2は、クルマの運動エネルギーをバッテリーに蓄える「減速エネルギー回生ブレーキ技術」、ステップ3が「モーター駆動技術」だ。このように、一気にハイブリッドカー(HV)、電気自動車(EV)へとジャンプするのではなく、ステップバイステップで手堅くクルマを進化させていくのがマツダ流。

 そして、このビルディングブロック戦略のベース技術となるのが、SKYACTIV TECHNOLOGYだ。これには、ガソリンエンジン「SKYACTIV-G」、ディーゼルエンジン「SKYACTIV-D」、オートマチックトランスミッション「SKYACTIV-DRIVE」、 マニュアルトランスミッションも含めた「SKYACTIV-MT」、そしてボディ「SKYACTIV BODY」やシャシー「SKYACTIV CHASSIS」が含まれる。これらクルマの基本技術を常に洗練し続けていく。

「今回、ガソリンとディーゼルのSKYACTIVエンジンを発表しましたが、出力、燃費ともに向上しました。また、トランスミッションでは、“走る歓び”を演出するような素早いシフトチェンジができることとともに、エンジンの効率のいいところをより使えるような設計にしています」

 導入時期は明らかにしてもらえなかったが、減速エネルギー回生ブレーキ技術も着々と準備ができているそうだ。マツダでは、ハイブリッドカー開発に向けてトヨタ自動車と技術協力関係を構築しており、モーターやバッテリーに関するノウハウを学んでいる。

「このように技術を積み上げていった暁には、性能だけでなくコスト的にも有利なクルマが生まれるだろうと思っています。エンジンをとことん良くしたらハイブリッドカーの最終的な姿も、もっと小さなモーター、もっと小さなバッテリーができるのではないか。こういう思いを持ってエンジンを改良しているんです」

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