“サービスサイエンス”で解き明かす! 丸亀製麺のもうかる秘けつ(1/2 ページ)

» 2011年07月05日 08時00分 公開
[三宅信一郎,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:三宅信一郎(みやけ・しんいちろう)

BFCコンサルティング社長。北海道大学経済学部経営学科卒業後、大手総合商社、コンサルティング会社、IT企業において長年に渡り、一貫して新規ビジネス開発分野に関わる。


 丸亀製麺は、トリドールが運営する讃岐うどん専門店です。ショッピングモールのフードコートや郊外に店舗を構え、釜揚げうどんなどを低価格で提供しています。

 店内に一貫した製造・調理体制を持ち、直営多店舗展開を行っており、「讃岐釜揚げうどん」などのキャッチコピーで全国展開し、2009年11月には同業者大手のはなまるうどんの店舗数を抜いてセルフうどん市場における店舗数第1位となりました。

 現在は全47都道府県への出店を行い、2011年6月時点の店舗数は477店と、快進撃を続けている人気店です。読者のみなさまも一度は行ったことがあるのではないでしょうか?

“サービスサイエンス”で解き明かす

 さて、ここで今話題となっている“サービスサイエンス”的アプローチを用いて、この人気の秘密を探ってみましょう。

 サービスサイエンスでは、サービス品質を「正確性」「迅速性」「柔軟性」「共感性」「安心感」「好印象」の6つの評価軸で管理します。

 どんなサービスも正確でなければなりません。また、世の中のビジネススピードはどんどん速くなっており、それにつれて迅速なサービス提供が求められています。

 また、お客様の好みが多様化しており、それに答えるためには柔軟性が求められます。顧客が何を望んでいるかを把握するためには共感性が欠かせません。そして、サービス全体から顧客に安心感を抱かせ、スタッフの醸し出す好印象も大切です。

 正確性や迅速性は成果品質に大きな影響を与えるサービス品質であり、安心感や好印象はプロセス品質に大きな影響を与えるサービス品質なのです。

 普通の街のうどん屋さんは、たいていそれほど種類の多くないメニューの中から注文されたうどんを素早く提供して終わりです。つまり、「正確性」と「迅速性」という2つのサービスサイエンス品質をカバーしています。

 丸亀製麺の場合は、この切り口からよく観察してみると、何と6つの品質の中の5つをカバーしているのです。

 「正確性」と「迅速性」という成果品質をカバーしているのは当然ですが、うどんとトッピングの種類が極めて豊富なので、その組み合わせによって顧客個別の好みに合ったうどんを提供することができます。これは「柔軟性」と言えると思います。

 さらに、店舗に足を踏み入れると、すぐに目の前に飛び込んでくるのが、うどんの製造工程現場。うどんの粉からうどんにする製麺工程、それをゆで上げる工程にそれぞれ専門の職人がついて、てきぱきと作業をしている環境をつぶさに目にすることができます。

 普通のうどん屋では、おやじが奥の厨房で作るので、どうやって作っているのか知る由もありませんが、丸亀製麺の場合はこのプロセスの見える化の仕組みによって、顧客に「安心感」と「好印象」を与えているのです。

 それに加えて、普段見慣れない作業現場を見ながら顧客は順番待ちをするので、通常は苦痛以外何物でもない待ち時間もアトラクションの1つに変わり、顧客の満足度を高めているのです。

 つまり、丸亀製麺は「共感性」を除いた「正確性」「迅速性」「柔軟性」「安心感」「好印象」の5つの品質を管理しサービスを提供しているのです。

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