売りが先行、好決算銘柄も何とか10000円水準を維持清水洋介の「日々是相場」夕刊(2/2 ページ)

» 2011年07月27日 16時38分 公開
[清水洋介,Business Media 誠]
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明日の相場雑感

 米国株が軟調、為替が円高ということで売りが先行といわれて軟調となりました。ただ、外国人も買い越しと伝えられた中で円高気味となっていることもあり、円高だから売られたというよりはインドの利上げで世界景気の拡大をけん引してきたインドなどの新興国のインフレ懸念が強まったことで、手仕舞い売りが嵩んでいるということだと思います。決算発表が日米ともに本格化していますが、米国の決算の状況を見ても、好調なものが多く、一時の日本の企業と同じで慎重な見方をしすぎているということなのだと思います。日本企業の決算も大震災の影響を早々と払拭し、多くのエコノミストがV字回復はないと言っていましたが、V字的な回復を示す企業も多いような感じです。

 本日のような相場の時に聞こえて来るコメントは「アジア株が安いから」とか「円高だから」などということが多いのですが、昨日の米国市場も本日の日本市場もインドの利上げの影響も大きいのではないかと思います。中国でもインフレ懸念からの利上げが繰り返されており、中国、インドといったところ、そしてブラジルやインドネシアなども利上げが続いており、新興国全体の経済拡大のスピードが鈍化することは十分に考えられることではないかと思います。ただ、一部で言われているような「クラッシュ」的な景気鈍化はまず、ないと考えて良いのではないかと思います。もちろん、インフレを気にしすぎて、バブルを気にしすぎて行きすぎた引き締めをするとバブルの後遺症として日本のようにダメになってしまう可能性もないこともないのですが、中国なども国家が景気動向をコントロール出来ているので今のところ大丈夫ではないかと思います。

 何でも世界一でなければならない中国でも、さすがに今回のような鉄道事故が大々的に世界に知られてしまうと、違うところに目をそらしつつも中国の経済の強さや技術発展のスピードなどを世界に知らしめる必要があるということなのだと思います。今後さらに開放的になりつつ経済の拡大を図る可能性もあり、インフレ懸念などが言われているうちに中国にもう一度目を向けても良いのかもしれません。インドでもインフレ懸念は強いのですが、経済の拡大は順調に続いており、新興国経済の拡大鈍化は杞憂に終わるのだと思います。

 日本でも本来であれば内需振興などがあっても良いのですが、個々の企業に委ねている感じで、日本としての方向性はどっちに行くのか全く見えていません。ただ、政府や日銀がおろおろしているうちに、円高に対する抵抗力がかなり強まった企業も多く、円高や米国景気よりも東南アジアの景気動向などを気にして見るのも良いかもしれません。中国での鉄道事故からの失地回復、インドのインフレ懸念と経済拡大、そして中国、インドがインフレ懸念が強まっているなかでタイやインドネシアそして中近東、北アフリカや東欧などの経済拡大に目を向けてみるのもいいのかもしれません。

清水洋介氏のプロフィール

慶應義塾大学法学部卒。1983年に大和證券に入社、以来、マネックス証券、リテラ・クレア証券で相場情報などに携わってきた。営業やディーラーの経験を基に、より実戦に近い形でのテクニカル分析、市場分析に精通している。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカル協会会員。著書に『江戸の賢人に学ぶ相場の「極意」 』 (パンローリング)、『儲かる株価チャート集中セミナー』(ナツメ社)。清水洋介の「株式投資の羅針盤


※掲載されている内容は、コメント作成時における筆者の見解・予測であり、有価証券の価格の上昇または下落について断定的判断を提供するものではありません。
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