デフレが終わり、物価が上昇するワケ新連載・岡村流、30代から始めるグローバル投資術(1)(3/4 ページ)

» 2011年08月04日 08時00分 公開
[岡村聡,Business Media 誠]

5年後、10年後に怖いのは円安に端を発したインフレ

 では、この円高傾向はどの程度続くのでしょうか。このことを考える時も、物価の推移が重要になってきます。今後5〜10年を考えると、日本はデフレの反対、つまり物価がどんどん上昇していくインフレになる可能性があります。

 なぜなら日本政府の債務問題が深刻になりつつあるからです。図2に、各国のGDPと国債残高の比率を載せています。国の借金が返済できないほど膨らんでしまい、通貨の価値が暴落すると、社会不安につながるため、米国のCIA(中央情報局)は、世界の主要140カ国について、政府の借金残高をまとめています。日本政府は借金の多さで世界ワースト1であることが分かります。

日本の借金はこんなに多い (図2、資料:CIA “World Factbook 2010”)

 IMF(国際通貨基金)からは、「日本の財政状態は不健全で今後5年間で消費税を15%程度にまで上昇させ、新規国債発行を停止すべき」と警告を受けています。また、今年の1月には、格付会社のS&Pが日本国債の格付けを引き下げ、5月末にはムーディーズも格付けを引き下げる見込みであると表明しました。

 でも、なぜこれほど借金が多い日本で信用不安が起きていないのでしょうか。現在、債務問題が深刻になっているギリシャも、国債のGDP対比では日本よりも随分少ないレベルです。それは、日本政府の膨大な借金を、ほぼ全て国内で消化することができているからです。皆さんが銀行に預けているお金や、生命保険の掛け金、年金などの多くは、日本国債の購入に回っています。

 当たり前のことですが、日本の個人資産も無限ではありません。政府の借金が増えてくると、どこかで国内では消化しきれなくなり、海外投資家による購入が必要になります。しかし今の日本国債は10年で年率1%という低い金利なので、年率3%ほどの米国債などと比較して魅力がありません。なのでもっと金利を上げなければ、海外投資家は購入してくれないでしょう。金利を上げると、元本がとてつもない大きさなので、年間の利払いだけでも数兆円ずつ増えていき、借金が雪だるま式に増え、政府借金のデフォルト、つまり日本発の信用不安となりかねません。

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