米国債格下げが嫌気されて大幅下落清水洋介の「日々是相場」夕刊(2/2 ページ)

» 2011年08月08日 16時10分 公開
[清水洋介,Business Media 誠]
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明日の相場雑感

 週末の米雇用統計は改善を示し、大幅下落の反動もあって底堅い展開となったのですが、米国市場の引け後に米国債の格下げが発表されたことで世界的な景気鈍化懸念が強まり、大幅安となりました。ちょうど「リーマン・ショック」の時のような感覚で売り急ぐことになったのでしょうし、欧州金融不安も合いまってG20やG7等が開かれたことでかえって騒ぎを大きくしたものと思います。

 米国債の格下げも、かつてサブプライムローン問題で浮上したように、格付け会社の問題もあり、本来であれば特に大騒ぎすることもないのでしょうが、欧州金融不安や中国での金融引き締め懸念等もあり、「大変なことだ!」ということになったのではないかと思います。結局はサブプライムローンの時と同様に格付け会社に世界の金融市場が振りまわされているという格好となり、ここで冷静に対処することが必要だったのではないかと思います。

 ただ、米国債の格下げは単純にきっかけにすぎず、世界的な株安要因はファンドの決算に絡む売りなどの要因が大きいのではないかと思います。米FOMC(公開市場委員会)の開催を前に手仕舞い売りが嵩んだということで為替も持高調整が出て円高に振れるとさらに輸出企業のドル売りが嵩むということなのでしょう。中国株の下落も米国債を多く保有しているから中国経済も鈍化するなどという見方もあるようですが、金の上昇がインフレにつながるのではないかとの懸念が強いのではないかと思います。

 まるで「デジャブ(既視感)」のように世界同時株安となって、前場は落ち着いていたのですが、為替の協調介入が入らないと見るとドルを売り急ぐ動き等もあって株式も売り急ぐ展開となったものと思います。ただ、本当に米国や中国の景気が鈍化しているということではなく、ちょっとした持高調整の売りが出るとパニック的に売られてしまうということなのでしょう。ここで大切なのは資金がこれまでのようにしっかりと流れているのかどうかということなのだと思います。

清水洋介氏のプロフィール

慶應義塾大学法学部卒。1983年に大和證券に入社、以来、マネックス証券、リテラ・クレア証券で相場情報などに携わってきた。営業やディーラーの経験を基に、より実戦に近い形でのテクニカル分析、市場分析に精通している。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカル協会会員。著書に『江戸の賢人に学ぶ相場の「極意」 』 (パンローリング)、『儲かる株価チャート集中セミナー』(ナツメ社)。清水洋介の「株式投資の羅針盤


※掲載されている内容は、コメント作成時における筆者の見解・予測であり、有価証券の価格の上昇または下落について断定的判断を提供するものではありません。
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