日本社会の中間層の厚みを増していきたい――野田首相就任会見全文(4/5 ページ)

» 2011年09月03日 06時42分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

原発の新規建設は困難

――(フィナンシャルタイムズ、ミュア・ディッキー)エネルギーの政策ですが、今点検などのために停止している原子炉はいつ再稼働されるのでしょうか。また建設中の原発でまだできあがっていないものにスイッチが入れられることはないのでしょうか。

野田 新規の建設予定、14基あると思いますが、私は新たに作るということはこれはもう現実的には困難だと思います。そしてそれぞれの炉が寿命が来る、廃炉にしていくということになると思います。寿命がきたものを更新をするということはない。廃炉にしていきたいと思います。

 その上で、当面の話です。今のこれは基本的な姿勢ですよね。当面の問題なんですけれども、これはさっきの冒頭のごあいさつのところにも触れたように、ストレステスト含めて、安全性を厳格にチェックした上で、稼働できると思ったものについては、これは地元のみなさまのご理解をいただくためにしっかりと地元のみなさまにご説明をしながら再稼働をしていって、特にこの夏と冬については、これは電力の需給関係見ると何とか乗り越えることができると思いますが、来年についてはちょっと幾分心配なところがございますので、そういうことで、再稼働できるものについては、しっかりとチェックをした上でですよ、安易ではありません、安全性をしっかりチェックした上で、再稼働に向けての環境整備、特に地元のご理解をいただくということを当面はやっていくことが必要だろうと思っています。

――(共同通信・松浦)総理は在任中に靖国神社を参拝するお考えはありますでしょうか。またそのするしないの理由もお聞かせ下さい。それと、総理は2005年に「A級戦犯は戦争犯罪人ではない」という趣旨の質問主意書を提出されておりますけれども、これは東京裁判を否定する趣旨なのでしょうか。それとそのA級戦犯については道義的責任等何らかの責任は何もないとお考えなんでしょうか。

野田 前段、靖国に参拝するかどうかですけど、これはこれまでの内閣の路線を継承して、総理、閣僚公式参拝はしないということをしていきたいと思います。いろんなお考えはあると思いますけれども、いわゆる国際政治等々、総合判断をすることによってそうしたことが必要だろうと思います。

 2005年の私の質問主意書についての背景、考え方についてのお尋ねでございました。1人の政治家としての、いわゆる法的解釈に基づいて、A級戦犯と言われた人たちの法的な立場の確認をするという意味での質問主意書を私は作りました。政府の立場でございますので、出てきた答弁書を踏まえて対応するというのが基本的な私の姿勢であります。従って、東京裁判云々ということではなくて、まさに法的な解釈に基づく法的な立場の確認をしたという質問主意書だとご理解いただきたいと思います。

――(ビデオニュース・神保)原発の再稼働についてちょっと追加で質問したいのですが、総理は今ストレステストで稼働できるもの、しっかりとチェックした上で稼働されるとおっしゃいましたが、現時点で、そのストレステストの結果を評価する体制も依然として、今まで通りの保安院が経産省の内部にあるというような今まで通りの体制になっています。それで、4月からこれを変えるという計画があるということは存じ上げておりますが、それまでの間、現在の体制のままでストレステストの評価をして、それをしっかりとチェックをしたら再稼働されるというおつもりなのか、それともその体制がきちっとできてから初めてそのしっかりとしたチェックというものが可能であるとお考えなのか。

野田 現体制でのチェックに対する信頼感というのは、私は多分国民のみなさんはそんなにないと思うんです。じゃあ来年の4月まで待てるのかと、環境省の中においてという対応が待てるのかというと、それでは遅すぎると思うんです。ちょうど過渡的なんですよね。

 過渡的な中で、国民のみなさまの不安をなくすためにどういう形のものができるかということを、これは原発担当大臣含めてしっかりと、ちょっと議論をしながら早急に詰めていきたいと思います。

――(日本テレビ・佐藤)今回の役員人事、閣僚人事見ていまして、やはりかなり党内のバランスに配慮したなと個人的に思っているんですけれども、総理自身は今回の人事の狙い、どこに重点を置いたのか。また世間ではもう「ナマズ内閣」と言われてるんですけれども、ご自分でニックネームを付けるとしたらどういう名前を付けられるか。

野田 いろんなバランスは考えたことは事実ですが、基本的には適材適所なんです。適材適所。さっき申し上げたようにいろんな課題を日本は抱えてる中で、どの方がこの分野で力強く力を発揮していただけるのが良いのかなということがもちろん最終的な基準でありますので、適材適所の中でさまざまな要素をバランス良く考えたということです。

 それをどう評価していただくかどうかは、これはみなさまの受け止め方だと思いますので、大体それぞれの社内もいろいろな人事があると思いますが、万人が納得する人事というのはなかなかありませんよね。その中でも私なりの判断で決めさせていただきました。

 キャッチフレーズ、スローガン、これは私あえて言いません。自分も選挙やってると自分の勝手なスローガンやるんです。浸透するとは思いません。歴代の内閣もいろんなキャッチフレーズを作りました。そのままそうだったかというと、決してそうじゃないですよね。あえてそういうことは言いません。ましてドジョウだナマズだという話はしません。

 これは我々が黙々と仕事をした中で、泥くさく仕事をした中で、政治を前進させた中で、国民のみなさんがどういう評価をするか、そこから出てくる言葉が本物だと思いますので、これはむしろ国民のみなさまにいずれ名付けていただくような内閣という位置付けにしたいと思います。

――(産経新聞・阿比留)民主党政権になって今回で拉致担当相がもう5人目になるということで、家族会のみなさんも少々がっかりしていらっしゃるようですけれども、今回菅さんが辞める直前になって、北朝鮮に誤ったメッセージを送りかねない、朝鮮学校無償化の検討指示をされました。これについては、拉致問題に何の進展もなくこういう状況下にある中で突然こういうことを言われるということに対して、北朝鮮に対して日本が何かこう、おかしいことを、メッセージを送るという指摘がありました。総理はこの菅さんの指示を見直すお考えなどありませんでしょうか。

野田 まず、拉致問題担当の閣僚がころころ変わる、これは拉致問題だけではなくて、本当に申しわけないのですけれども、さまざまな分野の閣僚が割と早い時期に交代せざるを得なくなったこと、拉致問題も含めて、その継続性という意味で、まず信頼を取り戻していくことがこの内閣の最初の課題かなと受け止めています。

 今の朝鮮学校の問題でありますけれども、これは8月29日に菅総理から文科大臣に指示をされたということと承知をしています。その背景としては、昨年の11月に砲撃事件がございました。その後そういう軍事的な動きがなかったということと、それから7月の米朝の対話、南北の対話等のそういう機運を含めて、少し環境が砲撃の前に戻りつつあるんではないかという、そういう判断があったのではないかと推察をいたします。しかし、これからの手続きは、これ文科大臣が行うんですね。その審査を。私は厳正に審査をしていただきたいと思っています。

――(フリーランス・島田)円高対策について伺いたいんですけれども、これまで財務大臣として円高介入を辞さずと、言っておりました。その円高介入がその円高にちゃんと効果があったかどうかというのはまだかなり不安な部分がありまして、これだけその、総理大臣として円高の対策として、例えば金融政策も合わせてやるとか、もう少し包括的な大きな流れで考えがあればお聞かせ下さい。

野田 私、財務大臣中、昨年の9月とそして今年の3月と8月と3回、単独、協調、単独と介入させていただきました。その効果については、これはもうみなさんのご判断を仰ぎたいと思いますけれども、急激な変動があった時、いわゆる過度な変動ですね。あるいは無秩序な動きがあったときの対応として、私はそれは一定の政策効果があったと思います。ただし、その流れが、過度な変動とかあるいは無秩序な動きとは違う、もっと底堅い流れについての対応が、多分今ご指摘の、あるいはご懸念の点なのだろうと思います。

 1つには、さっきこれから3次補正も含めて経済対策を講じなければいけないといった中で、まさに企業の立地補助金であるとか、あるいは中小企業の金融支援とか、等々やっていかなければならないと思います。あるいは、いわゆる円高メリットを生かした方策、これまでもやってきましたが、それをやっていきたいと思います。

 もう1つやっぱり大事な視点は金融政策なんだろうと思います。私は、これ問題意識は日本銀行も相当持っていただいていると思いますし、私どもが介入した時にも、いわゆる資産買い入れについては大幅に拡充するようなそういう政策も出していただきました。これからも緊密に連携を取りながら、問題意識を共有をしながら、金融政策自体はこれ日銀がやるわけでありますけれども、我々とまさに問題意識を共有しながら適宜適切に対応していただけるように、そして日本経済を金融から下支えしていただくようにしっかり協調していきたいと考えております。

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