日本社会の中間層の厚みを増していきたい――野田首相就任会見全文(2/5 ページ)

» 2011年09月03日 06時42分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

中間層の厚みを増していきたい

野田 財政健全化については待ったなしの状況です。ただし、私は決して財政原理主義者ではありません。現実主義の対応をさせていただきたいと思います。「成長なくして財政再建なし」「財政再建なくして成長なし」と何度も申し上げてまいりました。このバランスを取るというやり方は、これからもしっかりと堅持をしていきたいと思います。

 その前に、徹底的な無駄削減のための行政刷新を推進をしていく決意であります。加えて、政府与党の間でまとめました税と社会保障の一体改革、成案についてはそれを具体的に実行をするべく、与党内での議論をさらに具体的な制度設計に向けて進めていくとともに、与野党の協議を丁寧に進めさせていただきたいと考えております。

 こうした厳しい状況の中、先ほど申し上げた通り、震災からの復旧・復興、そして原発、こういう問題からのまず危機を乗り越えることと、今申し上げたような経済が今直面をしているさまざまな危機を乗り越えること、これが、私どもの内閣の当面のそして最優先の課題でございますけれども、こうした危機によって内向きになっているだけではダメだと考えています。今こそ、海外に雄飛をし、世界の課題を解決し、人類の未来に貢献をする高い志を持ちながら、海洋・宇宙への取り組み、あるいは豊かな故郷を作るための取り組み、人材育成にフロンティアあり、こういう考え方のさまざまな政策の推進も進めていきたいと考えています。

 新興国が台頭し、世界は多極化しています。アジア太平洋を取り巻く安全保障環境は大きく変動しつつあります。こうした中で、時代の求めに応える確かな外交、安全保障政策を進めなければなりません。その際に軸となるのは、私はやはり日米関係であると思いますし、その深化・発展を遂げていかなければならないと考えています。

 昨晩もオバマ大統領と電話会談をさせていただきました。私の方からは、今申し上げたように「日米関係をより深化・発展をさせていくことが、アジア太平洋地域における平和と安定と繁栄につながる」という、基本方針をお話をさせていただきました。国連総会に出席をさせていただく予定でありますけれども、直接お目にかかった上でこうした私どもの基本的な考え方を明確にしっかりとお伝えをするところから、日米関係の信頼、そのスタートを切っていきたいと思います。

 中国とは戦略的な互恵関係を、これも発展をさせていくということが基本的な姿勢でございます。日中のみならず、日韓、日露など、近隣諸国とも良好な関係を築くべく全力を尽くしていきたいと思います。

 なお、経済外交については今まで通貨や国際金融という面で私なりに取り組んでまいりましたけれども、これからはより高いレベルの経済連携あるいは資源外交等々の多角的な経済外交にも積極的に取り組んでいきたいと思います。特に、元気なアジア太平洋地域のその元気を取り込んでいくことが我が日本にとっては必要だと考えています。こうした観点からの経済外交の推進にも積極的に取り組んでいきたいと思います。

 先ほど、国連総会についても多少言及させていただきました。今般の日本の原発災害経験を教訓として、私どもが今取り組んでいること、教訓としていることについても、発信をしていきたいと考えております。早急に主要国の首脳と信頼関係を築くべく、どんどんとこうした海外の主要国とのみなさんとの交流も深めていきたいと考えております。以上、私の基本的な当面の課題についての取り組みと、政治姿勢についてのご説明とさせていただきました。

 もっと申し上げたいことはいっぱいありますけれども、理念としてはまさにこの国内においては、何度もこれまで申し上げてまいりましたけれども、中間層の厚みがあったことがこの日本の強み、底力でした。残念ながら、被災地も含めて中間層からこぼれ落ちてしまった人たちが戻れるかどうかが大事だと思います。そうした視点から、まさに国民生活が第一という理念を堅持しながら、中間層の厚みがより増していくようなこの日本社会を築いていきたいと思います。

 そして内政が安定して、政治が信頼をされて、ひとつひとつ課題を乗り越えていった時に、ようやく外交力の源泉が生まれてくるだろうと思います。目まぐるしく動く国際情勢のなかで一国財政主義、一国経済主義に陥ってはなりません。そのことをしっかり十分留意をしながら、まず内政で安定した基盤を作りながら、そして元気になった日本がこれまで以上に国際貢献ができるような、そういう体制を1日も早く作れるように全力を尽くしていきたいということを付言をさせていただきまして、まずは私の冒頭のごあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。

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