日本社会の中間層の厚みを増していきたい――野田首相就任会見全文(5/5 ページ)

» 2011年09月03日 06時42分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]
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脱原発は長期的な方針

――(朝日新聞・坂尻)今日は野田総理として初めての記者会見ですのであえてお伺いさせていただきます。それは総理に対するぶら下がりの取材というものについてです。これは自民党の政権時代から、平日は毎日、総理が立ち止まった形になっていただいて問い掛けに答えていただくということをしておりまして、これは政権交代後、鳩山政権、菅政権も基本的に踏襲していただきました。ただ残念なことに、菅政権の際、前任の菅さんは、東日本大震災の発生で多忙になったという理由で途中で打ち切られてしまいました。その後再三に渡って元に戻すことを求めていたんですけれども、最後まで聞いていただけなかったという経緯がございます。もちろん野田総理も国民との対話を重視されていることと思いますし、目下のところ震災復興は焦眉の急ではありますが、毎日のように危機管理センターを設置するというような状況は脱したのではないかと見受けております。ですから、この際、我々の問い掛けに対してきちんと立ち止まって答えていただくという機会を元のように戻していただきたいと思っているんですが、その点について総理のお考えをお聞かせ下さい。

野田 そういうご要請があったと承りました。ただ前任の菅さんもさまざまなお考えがあって対応されたのだろうと思いますので、菅さんからよくそのお考えの背景であるとか、お聞きをしながら検討をさせていただきたいと思います。

――(毎日新聞・田中)原発に関して伺います。先程総理は、古い原発について更新せず廃炉していくとおっしゃいました。その一方で、新増設については現実的には難しいだろうということで、そうすると、総理として、長期的、将来的な社会、経済社会を考えた場合に、将来的には原子力発電に頼らずに社会を運営していくということまで視野に入れたことでそういう風におっしゃってるんでしょうか。その点お聞かせ下さい。

野田 頼らずにというのはそうですね。脱原子力依存ということは頼らずにと、将来的にですよ。今申し上げたように寿命が来たら廃炉、新規は無理、という1つの基本的な流れ。あわせて新しいエネルギーの開発、自然エネルギーの代替的普及、あるいは省エネ社会を着実に推進をさせるというその流れの中で、これきっちりと丁寧に、エネルギーの基本的な計画を作り上げていかなければいけないと思います。

 そして国民の不安を取り除く形の、まさにエネルギーのベストミックスというものをぜひ構築をしていきたいと考えています。という中長期的な話と、当面の問題はさっき言った通りであります。すぐに依存を完全にゼロというのは無理ですから、時系列的にこれ整合的な話になるようなものにしていきたいなと思います。

――(テレビ朝日・山崎)TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)について伺います。今回経済産業大臣に任命されました鉢呂さんはご存知のとおり農業関係の出身の方で、TPPにはどちらかというと慎重な方と思いますけれども、この方を起用したのは今後そういうTPPを変えていくというメッセージなのか、それとも今後TPPについては、今年11月にハワイでAPECもありますけれども、今後どういう推進をしていくんでしょうか。

野田 別に鉢呂さんの起用を、TPPに慎重にしろとか、反対にしろという立場で起用しているわけではありません。鉢呂さんはご自身のいろんなお考えを持ちながらもしっかりと現実的な対応をする方だということでございますので、例えば原発の問題も、あるいはTPPの問題もしっかり、さまざまな意見を聞きながら対応していただける方だと思っておりますので、一定のそういう色、カラーで選んでいるということではございません。

 TPPについてはこれ従来からの政府の方針通り、しっかり情報収集をしながら、そしてその総合的な判断をする、早期に結論を得るということをしていきたいと思います。

――(東京新聞・三浦)復興増税と消費税についてお尋ねしたいのですが、先ほどその償還の時期、あるいは税率引き上げの時期についておっしゃいましたが、長い目で見れば増税が行われるのではないかという不安を多くの国民が抱いていると思います。その一方で総理は中間層の厚みを増していくとおっしゃいましたけれども、長い目で増税という流れができる中でどうやって中間層の厚みを増していくのか、この点についてお考えをお聞かせ下さい。

野田 これは例えば、増税だと全部国民生活がマイナスという前提だと思います。税負担をお願いをすることによってそれは当然家計に影響をする。どの税目触るかによって違いますけどね。

 でも、そういう形でじゃあ作ったお金をどういう分野に投資をするのか、そこからまさに景気が上向くという要素もあるわけであります。生きたお金を使っていくという方向。そして内外の信認を得るということ等々、総合的な判断をした時のプラスマイナスを考えるべきだろうと思いますし、特に経済への影響が心配ならば、それはなるべくなだらかなやり方ということもあるだろうと思います。

 問題は「財源なくして政策なし」と私申し上げました。じゃあそういう形じゃなかったら、将来の世代に負担を負わせるのかという議論になります。その問題は、大震災によって、本当に大変だ日本はと、復旧してほしい復興してほしいと思っている国々はありますが、一方でそれぞれの国が財政健全化に一生懸命取り組んでいる時に、「日本の財政規律はどうなのか」と見られた場合に、妙な判断をされることは、これは避けなければなりません。

 という、成長と、そしてまさに財政のバランスを取るということが私どもの一番の政権の課題と申し上げましたけれども、今の復興の問題も税と社会保障の問題も、具体的なテーマとしてはこれをどうやっていくかということが、まさに回答が一番大事、どういう回答を出すかが大事だと思っているということであります。

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