ISSに滞在している古川さんと地球にいる子どもたちは、人工衛星を中継して“交流”した。人工衛星といっても一辺10センチくらいのものから、幅40メートルを超える大きなものまで、大きさはさまざま。上空350キロメートルから先、そこには約600機が飛んでいるのだ。
人工衛星といえばカーナビや衛星放送などに使われているが、将来的にはどのような利用方法が検討されているのだろうか。三菱電機宇宙システム事業部の古性雅英(こせい・まさひで)さんに話を聞いた。
「従来のGPSを使うと数メートル〜10メートルほどの誤差が出ますが、2010年9月に打ち上げられた人工衛星『みちびき』の信号を利用すれば誤差は2〜3センチから1メートルほどまで向上します。ここまで位置の精度が向上すれば、例えば、道を歩いている人がどういった属性なのかに合わせてピンポイントで広告を出すなど、新しいビジネスが期待できます。また今のカーナビは目的地付近に到着すると案内が終了しますが、精度が向上すると付近ではなく駐車場の入口への入り方や、高速道路を逆走すると警告してくれたりすることも可能になるでしょう」
2010年に打ち上げられた「みちびき」は1号機。日本とオーストラリアの上空を8の字を描くように周回しているが、衛星は1基だけなので1日に8時間しか日本をカバーしない。なので政府は2基目以降の整備について検討している。
2基目以降では緊急対応機能の追加が政府で検討されている。この機能が実現すると、大災害が発生したとき携帯電話の居場所に応じて避難情報を提供したり、山で遭難があったときには、遭難者からの「SOS」のシグナルを受け取ったりできるようになるという。
今年の夏は原発事故の影響で「節電」が叫ばれたが、実は宇宙で太陽光発電した電力を地球に送る――といった計画が進んでいる。これは1960年代に提唱された構想であるが、三菱電機ではこれについても「ソーラーバード(SOLARBIRD」と呼ばれる独自の構想を検討しているという。
宇宙太陽光発電は、宇宙空間に大規模な発電所を建築し、それをマイクロ波またはレーザーに変換して地上に送るというもの。太陽エネルギーの強さは地上に比べ約2倍、日照時間は地上の約4〜5倍。そのため地上の8〜10倍の発電量を、ほぼ24時間供給することが可能といわれている。
もちろん課題は多い。電気を変換するときの効率性や衛星群を宇宙に輸送するコスト面などが挙げられる。しかしこのソーラーバードが実現すればどのようなことが期待できるのだろうか。
「基本構想は宇宙から地上の受信アンテナに電力を送電するのですが、応用の構想として、人体に影響がない微弱なエネルギーを幅広く送電します。そうすることで、例えば携帯電話の充電を直接できるようするアイデアもあります。バッテリーのない携帯電話やラジオを空に向けているといつの間にか充電できている、といった感じですね。今のシステムは1カ所で発電してその電力を有線で配るというもの。このアイディアが実現すれば、電子機器の前提が変わるかもしれません」
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