ソニーの失敗、ベネチアンの成功に学べ――カジノ成功には何が必要なのか(2/5 ページ)

» 2011年10月07日 11時30分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

ウォルト・ディズニーがニューヨーク万国博覧会で見せたもの

 ヒトラーの次にロケーション・エンタテインメントの個性として世に現れたのは、ウォルト・ディズニーです。

 1940年代にアルミニウムの精錬会社として世界最大規模で、現在でも世界最大規模のアルコアという会社が米国にあります。このアルコアがイマジネーションとエンジニアリングという2つの言葉を融合させて、イマジニアリング(Imagineering)という造語を作りました。つまり、イマジネーションを使って、それをエンジニアリングと融合させれば、人の心に訴えかけられるような新たな奇抜なさまざまな建造物や産業製品が作れるという考えです。

 このアルコアが考え出したイマジニアリングというコンセプトに、ウォルト・ディズニーはさらにオーディオアニマトロニクス(Audio-Animatronics)という要素を付加しました。これはロボティクスとエンタテインメントを融合して、人の心に訴えかけるというコンセプトです。

 イマジニアリングとオーディオアニマトロニクスの合わさった成果物が、1964年にフロリダ州のオーランドで建設されたEpcotです。次画像の右側の中心がゴルフボールのような建物がEpcotです。

Epcot

 彼は自らが発想した技術とエンタテインメントのコンセプトの融合を、1964〜1965年にかけて開催されたニューヨーク万国博覧会で見事に表現しています。驚くべきことに、ウォルト・ディズニーはこの万博でペプシコ、GE、それから競合している自動車メーカーのフォードとゼネラルモーターズという4社のパビリオンの受注に成功しました。そして、現在のロケーション・エンタテインメント開発にとって、非常に重要な4つのエレメントを具現化したのです。

 その4つのエレメントというのは、「国際的な視座に基づいたものでなければいけない」こと。住居もしくはオフィスのフル電化、「すべてフル電化が前提である」こと。それから、「人の搬送については効率の良い新しいシステムを導入する」こと。そして、「ロボティクスの導入」。この4つの要素をウォルト・ディズニーはニューヨーク万国博覧会で実現してみせたわけです。

 『メン・イン・ブラック2』で登場するシーンなので、みなさん次画像はご覧になったことがあるかもしれません。右上の画像は世界で初めて公開されたロボットです。エイブラハム・リンカーンのスピーチをロボットで再現させるという実演を行って、先ほど申し上げた4つのエレメントをエンタテインメントとして具現化しています。

 次画像にはウォルト・ディズニーの写真などが出ていますが、右上はピープル・ムーバーという現在のモノレールの原型となるような乗り物です。右下はウォルト・ディズニーがペプシコのために作ったパビリオンを、役員たちに見せているという写真です。

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