年収200万円時代を生き抜ける都市設計のあり方ちきりんの“社会派”で行こう!(2/2 ページ)

» 2011年10月10日 08時00分 公開
[ちきりん,Chikirinの日記]
前のページへ 1|2       

都心部に格安生活圏を!

 ちきりんは、そういう空想的な解決法以外に、現実的なアプローチも必要なのじゃないかと考えています。それは「集積エリア解」とでも言えるもので、「日本の中に年収200万円でも暮らしていける場所と仕組みを作る」というものです。

 例えば住環境。東京では月6万〜13万円くらいの家賃のアパートやマンションが一番多いでしょうが、この家賃は都心から地下鉄や私鉄で1時間ほど離れてもほとんど下がりません。家賃が半額となるエリアまで移動しようとすると、静岡県や山梨県まで行く必要があり、すっかり通勤圏外になってしまいます。

 一方、海外先進国の首都には“移民を含む低所得者層が集まって住む格安生活エリア”が都市の周辺(移動時間1時間以内)にもそこそこあります。

 それらは“スラム”というより“格安生活エリア”という感じで、家賃が安いだけではなく、家賃の週払いや、部屋の一部を「また貸し」することによる共同賃貸生活が可能です。不動産や同居人も不動産屋を通さず、フリーペーパーやネット、張り紙で集めるので手数料もかかりません。こうすると1人あたりの住居費用はかなり低くなります。

 東京にももちろん家賃3万円以下の物件はありますが、その数はとても少ないし、たくさんある7万円の部屋を借りるには、何だかんだで30万円くらいの初期費用が必要です。家賃の週払い制度もないし、共有やまた貸しも大半が禁止です。光熱費の基本料金も高く、日本というのは「最低生活費が非常に高い国」なのです。

 仕事の多い都心部に敷金や礼金が不要で、家賃3万円だけれど週払いが可能なアパートがたくさんあれば、時給の仕事の人でもアパートを維持することは、現在よりかなりたやすくなるはずです。

 また、そういう格安アパートが多く集積するエリアができれば、“そういうエリアの商売物価”が形成され、その水準に合わせた“エリア特化型ビジネス”も出てきます。

 例えば、「5時間以内に賞味期限が切れる弁当と総菜だけを売るコンビニ」とか(←近隣エリアから店長が自転車で毎日持ち込む!)、ミニマムアクセス米しか使わないけれど、ご飯は食べ放題の定食屋、不要品引き取りで集めた衣類と家電、家具しか置いてないお店(常設のフリーマーケット的な店舗)に、電車の置き忘れ雑誌だけを集めた本屋など……。

 いろいろ工夫をすれば、時給の仕事=年収額面200万円でも日々それなりに楽しく暮らせ、かつ、病気になってもホームレスにならなくて済むエリアができるんじゃないでしょうか。

 ちきりんが思うのは、「現実問題として収入格差がすでに“所与の条件”となっているのであれば、地価や生活費にも、もっと格差がないと生きづらいでしょう?」ということです。

 日本は、生活インフラの要求水準が“一億総中流時代のまま”とどまっていて、今や、基本的な生活費を払うだけのために、収入の大半を注ぎ込まざるをえない人が出てきてしまっています。

 そういった人の収入が増やせるならそうすればいいですが、それが無理なら、生活に必要な費用水準を下げることも考えるべきです。就業人口6500万人の2割近くにのぼる1000万人が年収200万円で暮らさねばならないというなら、それでも生活や人生が成り立つ地域が、日本全体の住面積の2割は存在しないとバランスがとれません。しかも、そういうエリアは仕事のない地方ではなく都会に必要なのです。

 そんじゃーね。

著者プロフィール:ちきりん

兵庫県出身。バブル最盛期に証券会社で働く。米国の大学院への留学を経て外資系企業に勤務。2010年秋に退職し“働かない人生”を謳歌中。崩壊前のソビエト連邦など、これまでに約50カ国を旅している。2005年春から“おちゃらけ社会派”と称してブログを開始。著書に『自分のアタマで考えよう』『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』がある。Twitterアカウントは「@InsideCHIKIRIN

 →Chikirinの日記


関連キーワード

ちきりん


前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.