原発から14キロ、浪江町のエム牧場で生き続ける動物たち東日本大震災ルポ・被災地を歩く(1/4 ページ)

» 2011年10月12日 18時30分 公開
[渋井哲也,Business Media 誠]

渋井哲也(しぶい・てつや)氏のプロフィール

book 『3.11 絆のメッセージ』

 1969年、栃木県生まれ。フリーライター、ノンフィクション作家。主な取材領域は、生きづらさ、自傷、自殺、援助交際、家出、インターネット・コミュニケーション、少年事件、ネット犯罪など。メール( hampen1017@gmail.com )を通じての相談も受け付けている。

 著書に『自殺を防ぐためのいくつかの手がかり』(河出書房新社)、『実録・闇サイト事件簿』(幻冬舎)、『解決!学校クレーム』(河出書房新社)、『学校裏サイト 進化するネットいじめ』(晋遊舎)、『明日、自殺しませんか?』(幻冬舎)、『若者たちはなぜ自殺するのか?』(長崎出版)など。メールマガジン 「週刊 石のスープ」を刊行中。

 5月、被災地の人々の生の声を集めた『3.11 絆のメッセージ』(被災地復興支援プロジェクト)を出版した。


 9月30日。私は福島県双葉郡浪江町の「エム牧場浪江農場」を訪れた。ここに来るのは4回目だ。

 福島第一原発の20キロ圏内は4月22日から警戒区域に設定されており、法的に立ち入りが制限されている。エム牧場は原発から14キロ地点にあるため、現在、通行許可証がないと入れない。今回はエム牧場の協力を得て、自動車で入ることができた。吉沢正己農場長の運転で、私は助手席に座った。

原発事故が発生した当初、吉沢さんはこのクルマに乗って東京電力に直訴しに行った。また、警戒区域の実情を訴えるために都心で街宣活動もした

 浪江町の津島中学校付近の国道114号線では、警戒区域に入る車両をチェックしていた。以前この検問に来た時は大阪府警が車両をチェックしていたが、この日の担当は神奈川県警だった。警察官に許可証を見せると、車両ナンバーをチェックされただけで入ることができた。

 エム牧場までの道中、至るところに「I'll be back つしま」「もどるぞ つしまへ」と書かれた牧草ロールがあった。

牧草ロールに書かれた文字

 「本当に帰れるのか」

 吉田さんはそうつぶやいた。警戒区域に入ると、徐々に放射線量が高くなってくる。吉田さんが持っていた線量計は毎時15.47マイクロシーベルトを示していた。ただ、原発に近付けば線量が高くなる、というわけではない。より原発に近いエム牧場付近は毎時3〜7マイクロシーベルトを計測していた。エム牧場の中でも、牧草が多い場所だと毎時10マイクロシーベルト前後だった。

少し場所を移動するだけでも、線量計の数値は大きく変化する
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