コラム
» 2011年10月13日 08時01分 公開

メディアに問題はなかったのか ノーベル賞報道の弊害相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

[相場英雄,Business Media 誠]

 筆者が抱いた「待て」の率直な感想とは、先のスウェーデン紙の記事に寄りかかりすぎた報道が多数を占めていたからに他ならない。つまり、現地紙が「有力」と報じたことだけが根拠なのだ。共同電のあとの在京紙、テレビのニュースのあとは、情報番組もこぞって山中氏有力に傾斜していった。

 ちなみに、件のスウェーデン紙は昨年も同教授の「有力」を伝えていた。地元紙といえど、選考過程の詳細をつかんだ形跡が乏しい。この記事のみを根拠に、それが日本の選挙報道にある“当確”に近いニュアンスで伝えられたのだ。

 もちろん、主要メディアは事前に有力候補者の経歴や研究内容を取材している。当然、予定稿は万全の状態にある。筆者がチェックした限りだが、スウェーデン紙の報道を契機に、予定稿を吐き出してしまった感のあるテレビニュースさえあった。

 ここからは筆者の経験を交えての想像だが、新聞やテレビの報道局では「他のメディアが大きく扱った。ウチも扱え」的な幹部の声がフロア中に響いたはずだ。要するに、根拠に乏しい現地紙の予想記事でさえ、1社だけネタを落としてしまう「特オチ」を恐れるあまり、我も我もと転電してしまったのが実状だと考える。

株式市場をミスリード

 新興企業の株式市場であるジャスダックに上場する「J・TEC」という銘柄がある。再生医療を専門に扱うバイオベンチャー企業だ。

 先に触れた山中教授と直接関係する企業ではないが、iPSを主な研究対象としている。同社の株価は、ノーベル賞の医学生理学賞の発表前に思惑的な買いを集め、同賞発表直前の3営業日で10%超も株価が急伸した。

 ただ、同賞の正式発表後は8%超値を下げた。新興市場銘柄で値動きが荒いという側面もあるが、この乱高下は明らかに思惑的な取引が過熱した証左だ。

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