“カレー界のなぎら健壱”を目指しています――「カレー」キュレーター 飯塚敦突撃! となりの専門家 第5回(1/2 ページ)

» 2011年10月19日 08時00分 公開
[畑菜穂子,Business Media 誠]
ONETOPI「カレー」は濃密なカレー情報を日々発信している。Twitterアカウントは@curry_1topi。ONETOPIリーダーアプリでリアルタイムで情報収集できる

 アイティメディアが運営する「ONETOPI」で、さまざまな分野に精通したキュレーターへのインタビューを行う「突撃! となりの専門家」。連載第5回を迎えた今回はONETOPI「カレー」のキュレーターを務める飯塚敦さんにお話を伺った。

 飯塚さんは2005年にブログ「カレーですよ。」を開設。以来、約5年半の間に1500食以上ものカレーを食べ歩くかたわら、インドの土釜「タンドール」を自作するプロジェクトを立ち上げるなど、多方面に渡って活躍する。ONETOPIでは2011年2月より「カレー」にまつわるトピックを発信している。

“カレー界のなぎら健壱”を目指しています

Business Media 誠 飯塚さんはどのようなきっかけでカレ―に興味を持たれたのでしょうか。

ONETOPI「カレー」キュレーター 飯塚敦さん(はぴい)

飯塚敦(以下、飯塚) 高校生のときに、九段下の「アジャンタ」(現在は麹町に移転)で生まれて初めてインドカレーを食べたんです。当時はエスニックなら値段も手ごろだし、ちょっとおしゃれだからデートに使いやすいという程度の思い入れしかなかった。なのに、あまりの美味しさにすっかりカレ―に夢中。デートどころではなくなってしまいました(笑)。以来、小遣いをためてはカレ―を食べ歩くようになったんです。

Business Media 誠 2005年にブログ「カレーですよ。」を開設された時点では、すでにかなりの数のカレーを食べていらっしゃったんですね。

飯塚 そうですね。とくに20代のころは雑貨の営業マンをしていたおかげで、全国に出張に行く機会があり、カレ―を食べ歩くエリアも格段に広がりました。札幌、名古屋、大阪……と、それぞれの街に行きつけのカレ―店ができるくらい、カレ―三昧の生活を送っていましたね。

Business Media 誠 ブログを開設したきっかけはどのようなことだったんですか。

飯塚 その後、30代半ばで転職し、焼き鳥チェーン店で店長として働きながら、相変わらずカレ―の食べ歩きを続けていたんです。ところが店長になって10年目にさしかかるころ、ひどいケガをして長時間の立ち仕事が難しくなってしまった。もう現場は退かざるを得ない。でも、何らかの形で飲食の世界にかかわり続けたいという一心でブログを始めたんです。

Business Media 誠 当初は仕事にするつもりはなかった?

飯塚 そうですね。もともと文章を書くのは好きだったけど、食べ歩きブログが仕事になるとはさすがに思っていませんでしたね。実際、仕事につながるようになったのは、つい最近ですよ。ブログを開設してから4〜5年はとくにアフィリエイトでもうけられるわけでもなく、ひたすらカレ―を食べる→更新の繰り返しでした。

Business Media 誠 ブログを書くにあたって、気をつけていることは?

飯塚 メニュー名と値段は必ずきっちり押さえます。逆に、お店の住所や電話番号はほとんど載せていません。いまは行きたいと思えば、ネットで検索すればその店を探せる時代ですから。ブログを書き始めたころは個々の味に言及していた時期もあるけれど、最近はあまり書かなくなりました。味の話もいいけれど、店の雰囲気をはじめとする、そこに行かなければ味わえない“何か”を伝えたい。目指すは“カレ―界のなぎら健壱”です(笑)。

ジャンル違いの趣味を2つ持つと世界が広がる

Business Media 誠 飯塚さんは「iPhone×Movieスタイル」(技術評論社)という本も出されています。

飯塚 じつはガジェット好きでもあるんです。僕より詳しいガジェット好きの人はたくさんいるけれど、「カレ―×ガジェット」という人はあまりいないので面白がってもらえたんです。イベントに顔を出すたび、知り合いが増え、人の輪が広がっていく。そんなことを繰り返しているうちに「書いてみない?」と声がかかりました。iPhoneとTwitter、そしてカレ―のおかげで本を出せたようなものなんです。

Business Media 誠 すべてがつながっているんですね。

飯塚 いまは企業であっても、個人であっても自分たちが活躍できるフィールドを増やしていかないと、商業活動が立ち行かないような時代にさしかかっています。かといって、目先の利益を追いかけているだけではフィールドは増えない。まずは誰かをめいっぱい楽しませることが大事なんです。そうこうしているうちに、フィールドを一緒に広げて行ける仲間も見つかります。

 記事を書くことでカレ―界が賑わえば、僕のフィールドも広がる。お互いが協力して場を盛り上げる仲間をいかに見つけるか、ということなのかもしれません。

Business Media 誠 飯塚さんは震災支援プロジェクト「カレーの力を信じている」のお手伝いもされています。

飯塚 カレー屋さんやカレー好きの人が協力して、被災したカレー屋さんを助けるというコンセプトがいいなと思ったんです。いまはサイト上に“カレ―の記憶”をアーカイブとして残すプロジェクトも進行しています。震災で店舗はなくなってしまったとしても、カレ―の想い出は消えない。まったく違う職業に転職せざるを得なかった店主があるとき、サイトをのぞいたら昔のお客さんが集まって「あのカレ―、もう一度食べたいね」「あの店、良かったよね」と盛り上がっていたら、すごく励まされるんじゃないかな。やっぱり、俺の人生は間違っていなかったなと、明日からまた頑張れる気がするんですよ。

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