ゲームは単なる娯楽という1ジャンルを超えて、今や私たちの生活全般に広がりつつある。このコラムでは、ソーシャルゲームや携帯電話のゲームアプリなど、すそ野が広がりつつあるゲームコンテンツのビジネスモデルについて、学術的な背景をもとに解説していく。
データ・ドリブン(駆動型)というと、「ソフトウエアにデータを入れれば解決案が自動的にアウトプットされる」魔法の箱があるように、過度に期待される節がある。確かに、大量ログデータを解析するデータマイニングは、売上向上に対して今までにはない即効的な効果を発揮する。しかし、データ分析が注目されるあまり、数字が単なる数字にしか見られないようになった時、ゲームを楽しむ顧客ひとりひとりに思いをはせるサービスの本質から遠ざかっていかないかと、筆者は危惧する。
→ソーシャルゲームにおける日本型データ・ドリブンのあり方とは(前編)
最近、「データ・ドリブンで一番効く変数はどれですか?」と聞かれることが多い。しかし、「これさえ押さえればすべてOK」という万能薬のような変数があるわけではない。ソーシャルゲームで扱う変数は、ユーザーがゲームをプレイする行動1つ1つであるから、ゲームの種類によってさまざまである。例えば、育成系なのかバトル系なのかによって、実際に測定する変数は違ってくる。
大事なのは、単発的な解答を知ることではない。データから意味のある改善策を得るまでのプロセスが大事なのである。「データ・ドリブンの本質は、分析手法よりむしろ分析を実現する組織体制にある」と筆者は考える。
そもそも、ゲームの面白さの勘所が分からずに、最初に設定する問題自体が検討違いであれば、その後にどんなに高度な数理モデルを使っても、算出される結果は検討違いのものになる。数学や統計の専門家は、計算過程の精緻性に長けているが、問題設定の適切性については判断できない。だから、実際に開発と運営に携わり、ユーザーの遊び方を見ている担当者とどれだけ連携がとれるかが、データ分析の精度を決めることになる。
それにしても、ソーシャルゲームで扱う変数は際限ない。チュートリアルの何ステップ目をクリアしたか、どのユーザーと戦って結果はどうであったか、何のアイテムをいつ購入したか。ユーザーのゲーム内行動の1つ1つが分析対象となるからだ。さらに、それらの変数間の総当たりの組み合わせを考えると、気の遠くなる分析工数になる。
そこで筆者が提案するのは、2つのアプローチである。1つは、ソーシャルゲームのあるべき姿、つまり理想形を念頭に置くことである。理想と現実とを比べることで、何をすべきかその方針を立てやすくなる。これは前回のコラム(「ソーシャルゲームにおける日本型データ・ドリブンのあり方とは(前編)」)で説明したことである。
もう1つのアプローチは、データの全体像を把握することで、膨大なデータの中で迷子にならないように方向感覚を付けることであり、これが今回のテーマである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング