融合は終わり。次に来るメディアは?中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(1/4 ページ)

» 2011年11月01日 08時20分 公開
[中村伊知哉,@IT]

中村伊知哉(なかむら・いちや)氏のプロフィール:

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授。京都大学経済学部卒業。慶應義塾大学博士(政策・メディア)。デジタル教科書教材協議会副会長、 デジタルサイネージコンソーシアム理事長、NPO法人CANVAS副理事長、融合研究所代表理事などを兼務。内閣官房知的財産戦略本部、総務省、文部科学省、経済産業省などの委員を務める。1984年、ロックバンド「少年ナイフ」のディレクターを経て郵政省入省。通信・放送融合政策、インターネット政策などを担当。1988年MITメディアラボ客員教授。2002年スタンフォード日本センター研究所長を経て現職。

著書に『デジタル教科書革命』(ソフトバンククリエイティブ、共著)、『デジタルサイネージ戦略』(アスキー・メディアワークス、共著)、『デジタルサイネージ革命』(朝日新聞出版、共著)など。

中村伊知哉氏のWebサイト:http://www.ichiya.org/jpn/、Twitterアカウント:@ichiyanakamura


※編集部注:本記事は2011年10月27日に@IT「中村伊知哉のもういっぺんイってみな!」で掲載された記事を転載したものです。

 融合は、終わった。ポスト融合が本番を迎えている。

 通信・放送の融合は20年も前から議論されてきた。放送にITが侵入してくることに否定的だった放送業界も、近ごろはテレビ番組のネット配信や、ケータイ向け放送や、見逃しIP視聴などに力を入れている。いずれ融合なんて死語になるぞ。

 ただ、海外と比べたら、いまだヘッピリ腰だ。

 号砲は2006年1月、米国でグーグル、ヤフー、マイクロソフトがアップルに続き映像配信ビジネスを発表。ネット企業がハリウッドのコンテンツを引っさげ、世界市場を牛耳ると宣言したことだ。これに対し、CBS、NBCなど米放送界は電光石火、これらネット企業、IT企業群と提携し、人気番組を配信し始めた。放送局主導の配信サイトhuluはYouTubeと張り合い、日本上陸も果たしている。

 米国以上に放送局が前面に出ているのが欧州。BBCは2007年にYouTubeにチャンネルを設置、見逃しサービスiPlayerもスタートさせた。フランステレビジョンはフランステレコムと提携し、ドイツZDFやARDはドイツテレコムと提携。国営・公共放送局が融合を主導した。

 さらにニューズ・コーポレーションによるダウ・ジョーンズの買収、通信社のロイターとトムソンの統合、マイクロソフトとヤフー、グーグルを巡る攻防、最近ではグーグルによるモトローラ・モビリティの買収など、メディア業界は再編が進んだ。通信・放送の融合という狭い枠組は色あせて、新聞、出版、コンピュータ、ハードウェアなどメディア全体を巻き込む世界的な再編劇が繰り広げられている。ここに日本企業の出番はない。

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