“会見外バトル”を見て、記者は萎縮してはいけない相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年11月10日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『双子の悪魔 』(幻冬舎文庫)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 ここ数カ月、記者会見を巡る論議がインターネットを中心に活発化している。話題の核心は、会見での記者の振る舞いやモラルについて。ネット中継や動画配信を視聴した多くの人が記者の傍若無人ぶりに驚きを隠せない様子。一方の記者サイドもネット中継を通じ、会見が可視化されていることを意識し始めている。ネット中継という新たなツールの登場は、広く情報を伝達する手段として歓迎すべきことだが、記者が過度に萎縮してしまうリスクも潜んでいる。

※読売記者とフリージャーナリストが、民主党・小沢一郎元代表の会見後にバトルを繰り広げた

この程度でニュース?

 過日、某大手金融機関の元広報担当幹部と会う機会があった。

 四方山話をするうち、最近の記者会見がネット中継されていることに話題が及んだ。このとき、東日本大震災以降の東電の釈明会見、鉢呂前通産相の辞任会見、あるいは自由報道協会主催の会見での揉め事などが俎上(そじょう)に登った。

 コーヒーを飲みながら、同幹部の口からこんな言葉が漏れた。

 「あの程度の荒れ方でニュースになるのか」――。筆者も同感だった。

 お叱りを承知の上で触れるが、最近ネット上で話題となっている傲慢な記者の物言いや振る舞いは、取材現場、特に記者会見では日常茶飯事なのだ。

 筆者や先の幹部が経験した日本の不良債権問題(1990年代以降)の渦中では、会見は荒れに荒れた。

 会見者を頭ごなしにどなりつける記者、自説を延々と展開し、会見の進行を妨害し続ける著名な編集委員は多数いた。また、会見中に記者同士がつかみ合いのケンカを始めたり、灰皿やペンが飛び交う会見に接したのは一度や二度ではない。

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