のび太はしずかちゃんとドライブデートの夢を見るのか?それゆけ! カナモリさん(1/2 ページ)

» 2011年11月30日 08時00分 公開
[金森努,Business Media 誠]

それゆけ! カナモリさんとは?

グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。

※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2011年11月11日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。


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 トヨタの大ヒットCM「のび太のバーベキュー」編。路線バスでバーベキューに出かけたのび太(妻夫木聡)はクルマで来たスネ夫(山下智久)に、しずかちゃん(水川あさみ)をあっさり連れ去られる。いつものごとく机の引き出しから登場したドラえもん(ジャン・レノ)に「クルマ出して〜」と懇願するが、「ダメ、免許ないじゃん」といさめられる。CMのメッセージは「免許を取ろう」だ。

 2011年11月22日付日本経済新聞の記事によれば、20代前半の免許取得率は77.6%と4年で4.6ポイント低下しているという。免許を取ってもクルマの購入にはハードルがある。ソニー損保が新成人1000人に実施したアンケートによれば、クルマを持たない理由として7割が「経済的余裕がない」と回答したという。

 若者の「●●離れ」ということが叫ばれて久しい。ただし、ここで短絡的に格差拡大による若者の貧困化、草食化というイメージを持たないよう、注意が必要だ。例えば『絶望の国の幸福な若者たち』の著者で社会学者の古市憲寿氏は、さまざまなデータや分析を俯瞰(ふかん)した上で「若者は決してモノを買わなくなったわけじゃない。買うモノとそのスケールが変わっただけの話なのだ」と結論付けている。

 また2011年1月15日の日経MJの特集「コスパ世代を探れ」の中で、博報堂若者生活研究室アナリスト原田曜平氏は、「4畳半に住んでフェラーリを乗り回すようなことはないが、部屋は狭くとも寝心地のいいベッドを買ってアロマをたいたり、100万円の海外旅行には行かないが、お手ごろな熱海にちょこちょこ行ったり。自分の若いころと比較するから理解できないだけで、時代のステージが大きく変わった分、表現の仕方が変化したと考えればいい」とし、「バブル世代に権限がある限り、20代の成熟した消費を理解するのは難しいかもしれない」とキツイ。

 要するに「自由になるお金」が昔の若者と比べて本当に少ないかどうか、はっきりとしたデータはない。デフレであらゆる消費財は安くなっている。例えば1980年代前半、テレビは21型で21万円前後だが、現在は32型が4万円台から買える。「コスパ世代を探れ」の中でも、「『常におカネに余裕がある』『いつもおカネに余裕がない』のどちらに近いかとの問いに、『余裕がある』に『近い』『やや近い』と答えた人は37.3%。団塊ジュニアとほぼ一緒で、バブル世代より7ポイント近く多い」とのデータを紹介している。

 ステレオタイプ化せずに、いかに若者の真のニーズを探り、掘り起こせるか。そこがポイントなのだ。例えば、自動車には思いもよらぬ競合が登場している。実は最初に紹介した記事のタイトルは、「秋冬レジャー バスツアー若者も乗る 入場料・食事込みでお得感 免許証離れも影響」。中高年向けとのイメージが強いバスツアーの客層が変化しているのだ。

 はとバスによると、20代の利用者は全体の約2割と、この4年で倍増したという。中高年向けに日帰りバスツアーを催行するぽけかる倶楽部でも、9〜10月に20〜30代の利用者が全体の1割に達し、昨年の3倍に急増しているという。

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