のび太はしずかちゃんとドライブデートの夢を見るのか?それゆけ! カナモリさん(2/2 ページ)

» 2011年11月30日 08時00分 公開
[金森努,Business Media 誠]
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のび太を救うのは……

 クルマの価値要素を分解して考えれば、中核的便益は「移動・輸送」だ。欠かすことのできない実体的価値は「デザインやインテリア、燃費や走行性能、安全装置」。魅力を高める付随機能が「サービス・メンテナンスやローンの支払い方法」などになる。

 現在の若者のクルマに対するニーズは中核的便益の実現にしかないため、バスツアーが思いもよらぬ競合として登場しているのである。

 地方においては公共交通機関が弱いため、自家用車の「移動、輸送」というクルマの中核価値が欠かせず、免許取得率も高い。都市部では代替手段が多く、免許の絶対的必要性が低い。「エコ」という観点からも、クルマの購入費用や維持費というコストを考えても、スネ夫よりものび太が主流になっていくのではないか。

 前掲の特集「コスパ世代を探れ」では、「仲間との会話の道具や場、ネタになるものに対しては財布がゆるむ。ファストフードの新商品は格好の話のネタ。社会貢献付きボランティアツアーが人気なのも『関心を共有する仲間との、旅先での深い会話も魅力だから』と分析、「収入よりも、きずなとつながり。『円』より『縁』に生きる足場を築く。新たな物差しが新しい消費を生みつつある。社会構造が揺れ動く今、個人の縁こそが安心につながる。長い目でみれば、共生の時代ならではの合理的な消費行動と言える」とまとめている。

 「経験をシェアする」という価値観が高まれば、ツアー自体にテーマ性を持たせることによって同好の志と出会えるという、付随機能も提供できる。そう考えると、「免許を取ろう」よりも、「バスツアー活況」の方が環境との整合性があるように思える。また、「免許を取ろう」であれば、その先にあるのは「クルマをシェアしよう」になるのかもしれない。

 かつての若者は、DCブランドにはまってローンを組んで服を買った。現在はファストファッション全盛。見栄を張る、モノにのめり込むといった肩に力の入った消費は過去のものとなった。トヨタが業界1位の座にかけて、市場の縮小に歯止めをかけたいというキモチはよく分かる。しかし、ドラえもんに頼みたいのはトヨタ自身で、若者のニーズはすでにそこにないのかもしれない。

 人と人の付き合い方・関係は確実に変化している。それにつれて、モノとの付き合い方も変化しているはずだ。クルマありきで考えていると解は見えてこないだろう。のび太はしずかちゃんと、バスツアーでバーベキューに行く時代になったのだ。

金森努(かなもり・つとむ)

東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道 18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。

共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。


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