鳥取県境港市の『ゲゲゲの鬼太郎』、埼玉県鷲宮町(現久喜市)の『らき☆すた』など、アニメを活用した町おこしを行う例が近年目立つようになっている。
町おこしでは自治体や商工会議所が主体となることが多いが、それらと並んで関わることが多いのが鉄道事業者。中でも、沿線にアニメ制作会社が多いことから、熱心に町おこしに取り組んでいるのが西武鉄道である。
2007年に日本動画協会と協力して「アニメのふるさとプロジェクト」をスタートし、数々のアニメとのコラボレーションを展開している西武鉄道。プロジェクトに深く関わってきたヒューマンメディアの小野打恵(おのうちめぐみ)社長と、西武鉄道スマイル&スマイル部の野田政成氏が、取り組みについて解説した。
小野打 私はヒューマンメディアという会社を経営しているのですが、日本動画協会でも準会員としてさまざまなお手伝いをしています。今日は「アニメと鉄道のコラボレーションによる観光や地域振興」ということで、鉄道側の代表として西武鉄道スマイル&スマイル部の野田政成さんにおいでいただきました。
まず、大きなテーマとして、地域とコンテンツという話をします。コンテンツ産業は大変注目されていて、特にその地域おこしの効果が取り上げられることがあります。しかし、コンテンツで地域おこしをしていくのにも、いろんなパターンがあります。
コミュニティシネマや映画祭を開催して鑑賞者を呼んでくることから始まり、コンテンツ関連施設が地域に集中していくことで観光効果が生まれるというもの、ご当地コンテンツやフィルムコミッションでロケを誘致するというものがあり、さらにはコンテンツ産業そのものが立地することで地域産業になっていくということもあります。
アニメは東京一極集中の産業だと言われています。419社あるとされるアニメ制作会社のうち、80%以上の365社が東京に立地しています。普通、メディア産業は都心3区(千代田区、中央区、港区)に立地することが多いのですが、なぜかアニメ制作会社は練馬区に79社、杉並区に70社立地しており、419社の半数近くがその2区に集中しているのです。
そして実はこの2区が西武鉄道の沿線なんですね。日本のアニメの半分くらいを生み出している地域を走っている鉄道ということで、西武鉄道とアニメにどのような関わりがあるかをうかがっていきます。
アニメと鉄道というと、映画のタイアップがよく電車の中吊り広告で行われています。また、映画やテレビ公開を記念したスタンプラリーがあったりして、JR東日本のポケモンスタンプラリーでは、イベントの日になるとお父さんと子どもが山手線周辺を歩き回る光景が毎年見られるようになりました。
タイアップということで、鉄道にとっては集客、アニメにとっては作品の告知ということになるのですが、その相乗りもうまくやらないと、「どっちがお金持つの?」という世知辛い話になる可能性もあると思います。
そんな中、西武鉄道は社会貢献、あるいは地域振興という観点で、アニメをテーマにさまざまな取り組みを行っています(=費用は西武鉄道持ち)。そのあたりをうかがっていきたいのですが、野田さん、西武鉄道が日本動画協会と初めて接点を持ってから何年になりますか?
野田 社会貢献に関する契約を2007年10月1日に締結して、はや4年となります。
小野打 その前にも、1〜2年ほど準備期間がありましたね。日本動画協会と協力して西武鉄道が行っている「アニメのふるさとプロジェクト」という社会貢献の試みについてお話しいただけますか。
野田 まず、簡単に西武鉄道沿線の紹介からさせていただければと思います。西武鉄道は埼玉県所沢に本社を構えていて、東京都の北西部、JR山手線の池袋駅や高田馬場駅から、埼玉県の南西部にかけて線路を持っています。営業キロは176.6キロ、92駅を持っていて、1日の輸送人員は169万人です。
なぜ西武鉄道がアニメに関連する仕事をしているのかというと、今、少子高齢化で加速度的に沿線人口が減少しつつあることが背景にあります。私たち鉄道事業者は利用していただくお客さまがいて初めてご飯が食べられるので、利用人員を増やすことを目的として、「でかける人を、ほほえむ人へ」というキャッチフレーズのもと、多角的に社会貢献事業を行っているのです。
小野打さんから話があったように、西武鉄道沿線、特に練馬区や杉並区にアニメ制作会社がたくさんあるということは、私たちも以前から知っていました。しかし、アニメというなかなかハードルの高いところにどうやって切りこんでいくかといったことがあったのですが、紆余曲折の末、日本動画協会の協力で2007年に契約を締結して、鉄道のジャンルの中で社会貢献を切り口として何かを実施していこうということでスタートを切りました。もちろん、切り口は社会貢献ですが、最終的にはやはり沿線の価値向上を目指しつつ、定住人口の増加を目指していくことが目的です。
私は駅員や運転手を担当していたので、正直なところ「鉄道会社に入社して、何でアニメの仕事をしているんだろう」という違和感を感じつつも(笑)、ここ4年ほど社会貢献プロジェクトにたずさわってきています。
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