“レディー・カガ”に続け! 温泉地を沸騰させるプロモーション郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2011年12月01日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

観光資源は武器ではあるけれど

 温泉地の観光資源といえば「食」。農産物や加工食品である。群馬県では銀座のアンテナショップぐんまちゃん家で「ぐんまのおかみ温泉地緊急PR(参照リンク)」を展開。こんにゃくやシイタケ、マイタケ、上州牛や上州麦豚など、県農産物の配布や試食販売を行った。温泉旅館のおいしい料理を提供して、予約につなげる方策である。

 「歴史」という資源を活用し、「この温泉地はかくかくしかじか……」で集客する手もある。古事記ゆかりの神社が多くある島根県では、2012年の「古事記編さん1300年」を記念して神社巡りツアーを企画する。三朝温泉(みささおんせん)では、古事記が編さんされた奈良時代の貴族の料理を現代風にアレンジして提供する。

 また、三朝温泉は映画『恋谷橋 La Vallee de l'amour』の舞台ともなった。温泉地は古くから恋や心中、逃避行の舞台でもある。温泉宿に逗留して小説を書く文士のイメージもある。「物語」もまた観光資源なのだ。

 ハズレる確率が高い(笑)「キャラクター」戦略もある。秋田県仙北市の田沢湖高原温泉郷ではマスコットキャラクター「オモテナシ3兄弟(参照リンク)」を今秋デビューさせた。全国公募の中から選んだ「ヌクインダー(温泉の精)」「フカインダー(湖の精)」「イヤスンダー(山の精)」の3兄弟。悪くはないんだけど……。

オモテナシ3兄弟(出典:田沢湖高原旅館組合)

 マーケティングの王道は「ターゲティング」である。山ガールをターゲットに山行と温泉宿クーポンとか、サイクリストをターゲットにサイクリングと輪行(公共交通機関で旅)と温泉宿のセットもいい。

 変わったところでは「なまり」。県下35市町村すべてに温泉が湧く温泉王国の山形は、なまりを売りにする“ナマドル”の佐藤唯さんをプロモーションに起用して、山形のほっこりした魅力をアピールする。「この寒さに温泉でけえしきみ(景色見)かね。おらと一緒に来っかの」なんて言われたら、ぐっと来ないだろうか。この言葉はおらの創作だがの(笑)。

 創作ではあるが、これは最近読み返した森敦氏の芥川賞受賞作『月山』の一文をもじったもの。『月山』は“なまり小説”で、雪深い庄内地方の朽ち果てた古寺で、じいさまがぼつぼつ語るなまりが幽玄な舞台を作る。一方、そこに訪れる主人公の標準語は、どこか間が抜けている。その対比にひたりたい。

 かように温泉地の販促策はいろいろ。だが、どれも“レディー・カガ”という秀逸なワンワードには勝てない。なぜだろうか。

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