今、民主党がやるべきことは何か藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2011年12月12日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 国際会議に出席する閣僚は体力が必要だ。南アフリカのダーバンで開かれていたいわゆるCOP17(第17回国連気候変動枠組み条約締約国会議)も、長時間にわたる議論が続き、ついには予定を延長して、何とか一定の合意にこぎ着けた。ヨーロッパで開かれたEU(欧州連合)サミットもまた10時間もの議論の末、通貨同盟をさらに進化させることで、英国を除いて合意を見た。

COP17公式Webサイト

 ひるがえって日本では、与野党の間で合意が得られそうにないということで、国会はさっさと閉会してしまった。公務員の給与引き下げ特例法案や郵政改革法案(つまり民営化見直し法案)などは見送られてしまった。これでこの臨時国会では38本のうち13本が成立したにすぎず、法案成立率34%は民主党政権になって最低である。

 法案の成立が史上最低になったのは、ねじれ国会ということもあるが、それだけではあるまい。問題は民主党内のガバナンス、平たく言えば民主党内で合意が形成できないという党運営にある。それぞれの議員はそれぞれの政治基盤を背景に当選してきているわけだから、目指す政策もそれぞれに違うことは理解できる。それでも1つの政党として一体的に活動をしている以上、最終的には合意をすることが必要だ。どうしても党としての政策に納得できなければ、離党とか離党覚悟で反対票を投じるしかあるまい。

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉への参加問題、消費税増税問題、社会保障の改革問題、こういった大きな問題で党内は喧々諤々。まとまるのかどうかさえ見通しがつかないありさまである。「民主党内をまとめてから与野党協議に持ってきてくれ」という自民党の反応も無理はない。いつまでも「党内でいろいろ議論があるのはいいことだ」などと言うのは、およそ政党としての自覚がない妄言としか思えない。

臨時国会では一川保夫防衛相と山岡賢次消費者行政担当相の問責決議が参議院で可決された野田内閣

 そうこうしているうちに、今年度予算の第四次補正を組んで、さらに来年度予算を組まなければならない。その来年度の国債発行額は一応、今年度の44兆円以下に抑えるという方針を出している。しかし思い出してほしい。小泉首相は国債発行枠を30兆円に抑えると表明し、結果的にそれを上回ることになった。当時野党であった民主党からさんざん追及されて、「そんなことは大したことじゃない」と答弁したものである。しかしそこから数年しか経っていないというのに、民主党は44兆円で抑えるのが精一杯である。

 「財政再建は待ったなし」というだけの危機感を持っているなら、歳出をいかに減らすかということに神経を集中しなければならないはずだ。当然、大きな金額を捻出しようとすれば30兆円近い社会保障関連費に手をつけざるをえない。それでなくてもこの項目は毎年1兆円ずつ増える。払いすぎている年金を本来あるべき水準に戻すのに3年も5年もかけてはいられないはずである。

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