今、民主党がやるべきことは何か藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2011年12月12日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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緊縮財政こそが財政再建の重要な手段

 欧州の債務危機は、先週の段階で、各国がそれぞれの責任で財政赤字を抑制して、それをEU(欧州連合)が監視するという方向で話がまとまった(英国だけが強硬に反対して孤立してしまった)。しかしここで決まったことは中長期的な話であって、当面の問題、イタリアやスペインの債務借り換えをどう支援するかという話はほとんど何も決まっていないに等しい。

 それでもこの決定では、緊縮財政が財政再建の重要な手段であることを思い起こさせてくれる。しかし日本では、緊縮財政に対する強い抵抗勢力があちこち(官僚だけではない)に存在する。

 ただその背景には、GDP(国内総生産)の2倍という先進国中最悪(たとえばユーロ圏各国の申し合わせは、GDPの60%だ)の債務を抱えていてもなお、日本国債の利回りは1%強でしかない。イタリアやスペインはもとより、フランス、ドイツと比べても大幅に低い。実際、日本よりも国債利回りが低い国はスイスぐらいだ(もっとも、日本はデフレであるため、実質金利で言うとそれほど安くはないという見方もある)。

 それだけに国は資金調達に困らないという「自信」がどこかにあるのかもしれない。国民新党の亀井静香代表のように「どんどん国債を発行すればいいんだ」と思っている政治家も少なくない。しかしいつまで市場が日本の国債を喜んで買うかは保証の限りではない。これまでのような日本の国債への信認は期待できないとする見方も強くなりつつある。

 1つの問題は、日本の経常収支だ。大震災やタイの洪水の影響で、貿易収支が赤字になることが増えてきた。それだけでなく、この超円高を受けて、製造業は海外に生産を移転している。そうしたことが続けば、日本の貿易収支は恒常的に赤字になる可能性も出てくるだろう。今のところ所得収支の黒字が大きいために、経常収支が赤字になるわけではないが、ここが赤字になると日本の国債の信認は一気に低下するとされる。

 そこまでにどれぐらい時間が残されているのかということを考えると、民主党政権はまず何よりも国や地方の無駄を省くことに全精力を注ぐべきだと思う。現在のような経済の状況で増税すれば、さらに経済をシュリンクさせることは明らかだ。歳出カットは政治家にとっても官僚にとってもうれしくはない。予算こそ票や権力につながるからである。だからこそ政治や官僚制度を変えると標榜する民主党にやってもらわなければならないのだが、どうやらそれが幻想であったことを有権者は理解しつつあるのかもしれない。

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