縮小が続く斜陽産業に、20〜30代の若者たちが事業承継や経営参画を通じて挑んでいる。異業種から180度のキャリアチェンジを決断した彼女たちは、なぜあえてその業界を選んだのか。その挑戦と再生の物語を追う。
廃業の危機に瀕(ひん)した老舗かまぼこ店を救ったのは、当時24歳、社会人2年目の女性だった――。
中小企業の後継者不在が全国的な課題となっている。1890(明治23)年に創業した福岡県みやま市の「吉開のかまぼこ」も同様の問題を抱え、一時は休業に追い込まれた。
同社の再建を担ったのは、代表取締役の林田茉優さん(28)。「伝統を絶やしたくない」という強い思いが周囲の人々を巻き込み、廃業を阻止した。現在、高級路線へのリブランディングなどが奏功し、経営は安定軌道に乗り始めている。
「自分には何のスキルもない」――そう語る林田さんが、創業130年を超える老舗企業を引き継ぐことができたのは、なぜなのか。後継者不在に悩む全国の経営者に林田さんが伝えたいメッセージとは。
「私が唯一生まれ持った才能があるとすれば、それは『人に恵まれる才能』だと思います」
事業承継の過程には、いつも人との出会いがあったと林田さんは話す。
林田さんが事業承継に関心を持ったのは大学時代。福岡大学在学中に「ベンチャー起業論」を受講する中で、「痛くない注射針」の開発で知られる岡野工業(東京都墨田区)が後継者不在を理由に廃業するというニュースを目にした。
多くの人に必要とされる企業がどうして廃業してしまうのだろう。岡野工業の岡野雅行社長に手紙を書き、直接会いに行って話を聞いたものの、当時、すでに自分にできることはほとんど残っていない状態だった。
「岡野さんには持病があり、もう現場には立てないとも話されていました。すばらしい技術や伝統を持っているのに、後継者がいないという理由だけでなくなってしまう。その現実に大きなショックを受けました」
他にも同じ課題に直面する企業があるのではないか――。講義の中で後継者問題をテーマにプロジェクトチームを立ち上げ、多くの企業をリサーチする中で出会ったのが、「吉開のかまぼこ」だった。
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