同社は完全無添加のかまぼこづくりで知られ、130年以上の歴史を持つ。しかし後継者の不在で事業継続が難しくなり、2018年6月に休業。工場は稼働していなかった。
当時大学4年生だった林田さんが先代の吉開喜代次さんに出会ったときは、休業からすでに1年が経過していた。それでも顧客から復活を望む電話や手紙が届いていたという。
「吉開さんに『今どうしたいんですか?』って聞いたら、やっぱり後継ぎを探したいと言われました」
こうして林田さんは、在学中に同社の支援活動を開始した。大学卒業後には、小規模企業の技術伝承を支援する会社「CON」を立ち上げ、吉開のかまぼこの後継ぎ探しに奔走した。食品メーカーなど約60社に声をかけたが、全て断られてしまった。練り物市場は過去30年で半分の規模に縮小(※)し、採算性への懸念から引き受け手はなかなか見つからなかった。
(※)政府統計「水産加工品生産量」によると、かまぼこ類などの練り物製品の生産量は、1994年の82万トン超から2024年には40万8000トンに半減した。
そんな中「かまぼこを食べてみたい」と連絡をくれたのが、現在、吉開のかまぼこの親会社である、システム開発事業を手掛けるフロイデ(福岡市)の瀬戸口将貴社長だった。かまぼこを試食し、その数週間後には、工場でかまぼこづくりも体験してもらった。帰りの車中で「吉開のかまぼこをうちで引き継ぐことに決めたよ」と告げられた。
両者は出会ってわずか2カ月で、「会社同士の結婚」ともいえる株式譲渡の調印式を迎えることになった。調印式の数週間前、林田さんは瀬戸口社長から思いもよらない電話を受けた。
「ところで、君が社長をやらないか」
これまで後継者を探す支援者として携わってきた林田さんにとって、寝耳に水の提案だった。社会人2年目で経営の経験も知識もない。「それは無理です」と断る林田さんに、瀬戸口社長はこう続けた。
「経営スキルや能力はそれを持っている人たちを巻き込めばどうにでもなる。 ただ、誰かの応援や協力を得るのは、真ん中に思いの強い人が立っていないとできない。君以上に思いの強い人はいない」
不安を抱きながら吉開のかまぼこの先代に相談すると、大きな声でこう返ってきた。「それはよかやんね。学生の時からすごい熱心にやってくれた君なら信頼できる。まだ技術指導ができる体力はあるから、そこは私に任せとかんね」
こうして、林田さんが吉開のかまぼこ4代目の社長に就任。2021年12月末には、調印式でハンコを押し、吉開のかまぼこは再スタートを切った。
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