震災後、新築価格が上昇しているワケあなたはどうする? 住まいの選び方(3/4 ページ)

» 2011年12月22日 08時01分 公開
[権田和士,Business Media 誠]

震災後の新築成約価格が変化

 もちろん消費者の価値観の変化は、住まい選びにも影響を与える。

 耐震リフォームの需要が一気に増えたという局所的なこともあるが、それより2011年を通じて、震災前後でどのように変化しているかが重要である。そういう意味では、実は住宅商品の購入単価にその変化が現れている。

 グラフは、2010年10月から2011年までの「震災前後の首都圏の成約価格推移」である。中古戸建、中古マンションの成約価格は震災前後で大きな変化はないが、新築戸建ての成約価格が震災後に高くなっているのだ。

 実際に計算してみると、震災前の月平均の成約価格は3423万円、震災後の月平均成約価格は3504万円で、80万円ほど購入単価は高くなっている(ちなみに、首都圏の着工戸数も同じ月平均で見て、震災後のほうがわずかに増えている)。

 普通に考えれば消費者マインドが低下して単価が落ちると考えられるが、予想に反して成約価格が上昇している。さまざまな理由が考えられるが、前段の「つながり」というキーワードから考えると、消費者が大事にしたいと思う「家族とのつながり」に対しては震災前よりも積極的に消費するようになったと考えられる。

 大事な「家族のつながり」を災害から守るのは、何よりも「住まい」であり、その構造や性能には妥協しない。「安かろう、悪かろう」という消費ではなく、自分たちが大切にするものへの消費を重視した結果が成約価格に表れたのだ。

 また、肝心の購入費用増加分については「家族のつながり」が「親子近居」をもたらし、結果として、親からの資金援助が寄与していると考えられる。

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