2012年、企業が注目すべきは“感情”という動力(1/2 ページ)

» 2011年12月28日 08時00分 公開
[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:石塚しのぶ

ダイナ・サーチ、インク代表取締役。1972年南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業で職歴を積んだ後、1982年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「『顧客』の時代がやってきた!『売れる仕組み』に革命が起きる(インプレス・コミュニケーションズ)」「ザッポスの奇跡 改訂版(廣済堂)」がある。


 2011年11月21日、東京にてザッポス社CEOトニー・シェイを招き、チャリティ講演を主催しました。ザッポスといえば、設立10年未満にして年商10億ドルを達成し、2009年にはこれまた10億ドルを超える買収金額でアマゾンの傘下に入りました。

 「“企業文化”を戦略の中核とする」というユニークな経営の考え方と、「顧客を満足させるためなら、ほとんど何をしてもかまわない」「マニュアルなし、コール・スクリプトなし、コール制限時間なし」という型破りのコンタクトセンターでも有名です。

 そのザッポスを黎明期から年商10億ドル企業(今年は20億ドルに到達するくらいでしょう)に育て上げた若きカリスマ経営者トニー・シェイを招いた、感動の講演会でした。

 今回は、その講演の折にトニーが話してくれたことをまとめる、というよりは、2011年の終わりということで、今年のまとめも兼ねて「今、米国の(そして日本の)市場で起こっていることは、こういうことじゃないかな」「2012年には、こんなことが期待できるんじゃないかな」ということを書いてみたいと思います。

スキルではなく、心を磨く

 ザッポスに関する本(私の著書である『ザッポスの奇跡』でも、トニーの著書でも)を読まれた方は、もうよくご存じだと思うのですが、ザッポスの社員は入社直後に4週間の研修を受けます。その研修の際に、役職や職種に関係なく、すべての社員が、コンタクトセンターでの顧客対応の特訓を受けるのです。

 その背景にあるのは、「徹底した顧客サービス(エクスペリエンス)志向の会社を作る」ということです。そうするためには、ザッポスならではの顧客サービスの魂を社員に植え付けます。「顧客対応のスキル」を教えこむのではなく、「顧客のことを真剣に思いやる心」を磨くのです。

 もとより、ザッポスでは入念な面接のプロセスを通して、「顧客サービス志向」の人だけを雇っています。人が好きで、人を喜ばせたいという心(原石)をすでに持っている人を雇い、それをピカピカに磨き上げる。それが入社直後の研修の役割なのです。

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