マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba」
新年のごあいさつ、ソーシャルネットワークが大活躍。私も元旦からたくさんのコメントをやり取りした。こんな一句もツイートしたり。
「ソーシャルの旅人と我名よばれんお正月」
するとネットの向こうから、返礼ツイートが瞬時に返ってきた。
「Twitter Facebookを止まり木にして」
というのは自作自演(笑)。松尾芭蕉が旅立つ際に詠んだ歌に、弟子が返句したものをもじった。こうした歌の応酬を連歌(れんが)と言って、複数の人たちがひとつの場に集まり、誰かの五七五の歌に七七の歌をついで応える言葉遊びである。
「明けましておめでとう」「本年もよろしく」「お節料理をいただいてま〜す」「LAからhappy New Year!」などTwitterやFacebookなどに広がるあいさつは、まるで連歌である。
お正月ならではのコミュニケーション歌会始(うたかいはじめ)は、短歌を披露しあう「歌の会」で、皇族が歌を披露し合う儀式が有名。毎年お題が決まっており、2012年は「岸」。歌会始は画像投稿サイトの書き込みに似ている。
産業界のイベント、賀詞交換会は「本年もご発注、よろしくお願いします」という名刺交換会。これはLinkedIn(職業人向けのSNS)だ。お願いを奉納する絵馬や、シャッター押してひと言添えての画像投稿はTumblr(画像とミニブログ投稿サイト)に近い。ひと筆おろして壁に掲げる書き初めもTumblrかFacebook。「お年玉で○◯買ったよ!」「福袋をゲットしたよ!」のお知らせはPinterest(好きなものをシェアするコミュニティ)へのアップロード。もちろんTwitterはサッカー天皇杯や実業団駅伝、箱根駅伝の応援ツールである。
人々の往来や交歓が盛んになるお正月、その風習はまさにソーシャルネットワーク。いやソーシャルネットワークの方が、人々の語りや交歓の風習をIT化してきた、ということに気付かされて、日本文化からSNSを考えてみた。
年始行事とソーシャルネットワークをポジショニング図で整理しよう。
ヨコ軸は「報せる」から「交歓する」まで、タテ軸は「拝む」から「拝金」への位置付けを表す。おおよそ年始行事とSNSには次の分類が当てはまる。
日本ならではのSNSの使い方はとてもユニークである。日本人は言葉やコミュニケーションを大事にする国民。だからその使い方が習慣や文化と一体になっているのだ。ところが日本でのソーシャルネットワークは、他国に比べてカクダンに普及率が低い。
comScore調査によれば、世界43カ国でのネット利用者におけるSNSの利用率で、日本はなんと最低の中国の53%に次ぐ58%。他国が軒並み90%以上の中、ブービーなのである。
ニールセン・ネットレイティングスの調査でも、Twitter人口は1500万人、Facebookは1000万人だから、ネット人口9000万人のそれぞれ2割以下。mixiの2300万人があるじゃないかと言っても、若い世代の招待制井戸端メディア(現在招待制は廃止)であり、利用世代は広がらなかった。
なぜ日本でSNS参加率は低いのだろうか? そのワケにも日本固有の文化を感じざるをえない。
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