やがてトレンチコートの男性が、拡声器を持った。「在特会」の桜井誠会長である。
「もう学術的には慰安婦問題は決着がついているんだよ! それを今になって強姦だった強姦だったってね。これを許したら50年後に必ず、今新宿とか鴬谷とかで股を開いている朝鮮人ね、あれは強姦だったと言い出しますよ! 今みなさんの子ども、孫が我々のように罵られる。だから絶対にここで止める!」
集団から「そうだ!」「うそつきは死ね!」などど罵声が次々とあがる。桜井会長はたたみかけるように「おまえらも自分たちの名誉をかけて日本を罵るんだろ? だったら逃げるなよ」などと挑発するも、「人間の鎖」のみなさんは相変わらずノーリアクション。
これはいったいどういうことかと「人間の鎖」側の様子をうかがっていると、ひとりの若者が私を横目で見ながら、隣の長髪男性にヒソヒソとやっている。
「おい! そこのおまえ!」
「はい?」
長髪男性がものすごい怒りの表情で私に向かって突進してきた。瞬時に、警官が取り押さえる。気が付けば、なぜか私も若い警官に取り押さえられている。
「ね、ね……あちらもかなり気がたってますから。撮影は止めてあげてください」
耳元で必死に説得する若い警官。うーむ、「左翼」のみなさんはいろんな活動をされている人も多いので、「取材お断り」が多いのはもちろん知っていたが、ここまでピリピリしているとは。
「在特会」の挑発など気にかけてないように見えたが、実はいつブチキレしてもおかしくない状況なのかもしれない。
激しい言動とともに怒りを全面に押し出す「右翼」。内にマグマのように怒りをたぎらせる「左翼」。この2つが直接衝突したらいったい何が起きるのか?
(続く)
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