世界一周中に起業、26歳の若者がスペイン語オンライン学習事業を始めたワケ世界一周サムライバックパッカープロジェクト(4/6 ページ)

» 2012年01月31日 08時00分 公開
[太田英基,世界一周サムライバックパッカープロジェクト]
世界一周サムライバックパッカープロジェクト

なぜ世界を目指したのか

――お二人とも長期旅行中ということですが、なぜ旅立ったのか教えて下さい。

有村 僕は「ちっさい自分の殻を破りたかった」「モノを創る経験をしたかった」「自分を見つめて生き方そのものを考えたかった」。これらを全部ひっくるめてできることとして、世界一周という道を選択しました。

 モノを作るなら日本でもできる。ちっさい自分の殻を破ろうと思えば日本でもできる。そう、別に環境に依存しなくったって、日本でできることはいっぱいあると思いますよ。でも、日本にいて自分が刺激を得ることと、海外でのその経験は絶対に違うということだけは肌で分かっていました。

 実際に旅に出てちょうど1年が経とうとしていますが、今のサービスに結びついたことで、1つ自分の中で答えが出たと思っています。

吉川 結論から言うと、自分の将来を真剣に考え、自分のありたい姿を考えた時に、世界というフィールドで自分の可能性を試したいと思ったからです。そして、ここは話すと長くなるのですが「旅という形をとってそのプロセスを実現していきたい」と感じたからです。

 最初に誤解を生まないためにも言っておきたいのですが、自分は日本での生活にかなり満足はしていました。外資系の少人数制の消費財メーカーで人事・新卒採用の担当をし、給与もかなり高い水準で、まったくといっていいほど不満はありませんでした。

 そんな中で、世界で活躍する友達、起業をしている友達、なんでも話せる仲間などと交流する中で、自分の中で「自分のありたい姿って何なんだっけ」といった質問をすごい考え込んだ時期がありました。

 会社ももちろんチャレンジングで、毎日新しい学びや発見があったのですが、それ以上に「1人の人間として明日死んでも、自分は後悔しないだろうか?」「本当にこれで満足できるのか?」と疑問を抱き、「自分が接してワクワクするものを日本と海外双方に伝達できる人でありたい」という結論に至りました。

 これは僕自身が目指したい究極の姿です。これを考えた時に手段として、転職する、海外に留学するなど、いろいろなアイデアが出てきました。

 しかし、圧倒的に自分に不足しているものとして海外という大きな舞台を自分の肌で体感した経験があまりに少なかったこと。そして、それを自由に行える環境として、移動しながらそれらを実現していくことが自分にとっては重要と考え、今回日本を旅立ちました。

――旅行中に起業するという面白さ&困難についてはどのように感じていますか?

有村 僕は旅行中にビジネスになりそうなアイデアの種を見つけることがたまらなく面白いです。

 例えばそれまで中米を半年以上旅していて、一度も寿司を食べていなかった僕らは、パナマならうまい魚にめぐり会えると旅行者から聞いていたので、期待値最大で寿司屋に乗り込んだんですよ。

 しかし、寿司屋で出てきた寿司がまずすぎて、完食できなかったんです。日本でありえますか? 寿司が最後まで食べれないって。ありえないですよね!

 怒り心頭の私たちはその後行った2軒でもまったく納得できず、またそれを「オー、ジャパニーズスシー!」って言ってくる隣のテーブルの現地人に、怒りのあまり愛想笑いもできず、それで勢いあまって「パナマで寿司屋をやろう!」という話になったこともあります。

 パナマは現在建設ラッシュが進んでいて、それに合わせて海外からの長期滞在者が増えているんです。「おいしくない寿司屋で1人1500円くらい料金をとるのなら、この海外長期滞在者を狙った1人当たり5000円以上とる高級寿司屋ならいけるんじゃないか」とか。これは今でも「俺、職人で行きまっせ!」という人がいたらすぐに実行に移せるのですが。

 あとはグアテマラの織物やコーヒー、これらもビジネスの種になると思っています。こちらでは「まとまった情報」を手に入れる手段がまだまだ少ないので、日本ですでにあるようなアイデアでも、違う国の人々を豊かにする可能性が眠っています。もちろん逆もしかりです。旅行中にアイデアの種をいっぱい拾えることは、かなり面白いと思います。

 困難については、やはり一番は現地の人を動かすことでしょうか。「時間にルーズ」「絶対にネガティブなことを言わない」というこの2つの要素は、今もそしてこれからも困難として私たちに立ちはだかり続けると思ってます。

 グアテマラ人を始め、ラテンアメリカ系の人に共通で通じるものがあると思うのですが、この感覚が日本人とは違い過ぎて、「日本人と一緒に仕事をしたいなら、こんなんじゃダメや!」と何回口論になったか分かりません。

 この困難の解決には、ただ怒るだけではなくて、海外の人と仕事をするということがいかに自分たちの前提とずれていて違うのか。これを根気強く教え、海外の国の人々と一緒に「良いサービスを提供するために頑張ろう!」という姿勢を伝え続けることが大切ではないかと思います。

吉川 まず旅行者として起業する面白さについてですが、常に想定外の課題と向き合い、それを解決する作業ですかね。要は知らないことだらけの国で、毎日新しい仕事やチャレンジがあり、常に学びと振り返りの連続で、ワクワクする部分です。

 また、お恥ずかしい話ですが、グアテマラで仕事をしてはいるのですが、生活そのものはまったく旅行者と変わりなく、今までずっとゲストハウスやユースホステルで作業をしてきました。インターネットとPCさえあればできる。終日ゲストハウスにこもって(今も)作業ばかりしていたので、これほど環境に左右されず進められることは非常に助かっています。

 次に困難について。1つ目は課題の連続。

 これはいい部分でもあり、悪い部分でもあります。ただ、想定できない状況が常に自分たちの周りにはあって、それを解決したくてもできない問題もたくさんあり苦しんでいます。

 例として、人生初体験として、バスでピストル強盗に遭遇しました。8人組の強盗に襲われ、持っていたPC、電化製品、カバンから何まですべて盗られるという被害にあいました。当然バックアップデータをとっていなかった資料もたくさんあったので、せっかく進めた仕事がパーになり途方にくれました。頭が真っ白になり、ただ「生きていてよかった」と思えた経験でしたが、仕事面では大きな打撃を受けました。

 2つ目は、ラテン文化は「NO」と言わないこと。

 これは本当に致命的なのですが、グアテマラ人はどんなことでもポジティブにとらえる性格があるため、たとえ知らないことでも、できないことでも「NO」とは言わないのが、かなり仕事をする上で難しいです。

 こちらが仕事を現地人にお願いして、「できる」となったとします。その上で、業務を組み途中経過を確認すると……できていない。「何で?」と聞くと、その時になって初めて「分からない」と言う。そんなことが日常茶飯事にあります。こういった「NO」と言えない文化があることが、結構仕事をする上では大変です。

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