政治家を逃がしてはいけない――今、記者に求められること河野太郎氏が、原発報道を語る(後編)(3/3 ページ)

» 2012年02月08日 08時01分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
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世論と政治家の間にギャップ

――原発政策は世論が望んでいる方向に向かっているのでしょうか。世論と政治家の間に、ギャップがあるようにも感じますが。

河野:3月11日に地震が発生し、そして原発事故が起きるまで、私は自民党の中で孤立無援状態だった。事故が起き、若い議員は原発について考えるようになったが、長い間議員をやってきた人は違う。先輩たちの中には「たまたま事故が起きたから、みんなリアクションで一方向を向いているだけ。だから我々がアンカー(碇)になって、それを止めなければいけない」などと言っている。

 なぜ先輩方はそういったことを言うのだろうか。1つには、ずっとそれでやってきたから。経産省出身であったり、電力会社との関係が深いことも挙げられる。もう1つは、知識がないから。知識がないので、核燃料サイクルのどこに問題があるのかが分からない。「その部分は電力会社がやるので、我々としてはこうやれば、あとは自然に流れていく」といった考えをもっている。決定的に知識が欠如しているのだ。

 メディアからこのようなアンケートが来ることがある。「原発の再稼働についてどう思いますか?」と。しかしアンケートは、どちらかに○をつければそれで終わってしまう。アンケートではなくて、記者が政治家のところに行って、「なぜ、そう思うんですか?」「この問題はどうやって解決すればいいのですか?」と詰めていかなければいけない。記者が詰めていけば、多くの政治家はそこで立ち往生するはず。

 政治家にアンケートで問うても、逃げられるだけではないだろうか。今、大事なのは「あなた、考えていませんよね」「あなた、知識がありませんよね」「もっと勉強しなければ、政策判断できませんよね」といったことを政治家に知らせなければいけない。また読者もそのことを知らなければいけない。

 これから求められることは、記者が“逃げ場”をつくって聞くのではなく、囲い込んで逃げ場をなくして「どうなの?」と質問することだ。そして「この政治家はあまり考えていない」「この政治家はよく考えている」といったことが、きちんと伝わるような報道をしなければいけない。でなければ世の中の流れと政治家は乖離(かいり)したままになってしまうだろう。

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