“卓上ルンバ”に吸い寄せられて――『大人の科学』の魅力を探ってみた郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2012年02月23日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotoba


 “卓上ルンバ”に私の心は吸い上げられた。

 直径10センチ強のお掃除ロボットがテーブルの端まで進む。落下しそう!……その瞬間、崖っぷちでくるっと方向転換。壁にコツンとしても角度を変えられる。

テーブルの端を感知する卓上ロボット掃除機

 これは学研の『大人の科学マガジンVol.33(卓上ロボット掃除機)』の付録。サイズといい動きといい感動モノなので、吸い込まれるように大人の科学マガジン編集長の西村俊之さんに会いに出かけた。

『大人の科学マガジンVol.33(卓上ロボット掃除機)』

ギアのハーモニー

 「ギアだけで動くのがウリです」

 シースルーの本体の中に、かみ合うギアが見える。方向転換が始まるのは、両端の赤い方向制御ギアを結ぶ方向転換シャフトが左右に動くから。センサー部(バンパー)が下がるか押されるかして、その動きが機械式タイマー部に伝わる。タイマーの丸い回転板には切片部があり、そこにレバーがコツンと落ちると、ウォームギアがかんで外れてシャフトが左右する。

 一連の動きはまさに“ギアのハーモニー”だ。

卓上ロボット掃除機PV 大人の科学マガジンVol.33

 Vol.33の冊子には「ルンバの中身を見る」「iRobot社は人に必要とされるロボットを作り出す」という記事がある。付録は、本家ルンバとはまったく違う機構である。本家はよりよい吸引を実現するための自動操縦やセンサー機能が満載。さて、大人の科学版の吸塵力は?

 「意外に吸いますよ。でも、コンセプトは“元祖付録付きマガジン 大人版 科学と学習”ですから、原理を知る楽しみを感じてほしいですね」

 「吸えないじゃないか」というお叱りの電話はまだないと西村さんは笑う。確かにこれに吸わせるくらいなら、手でサッサとふいた方が早い。魅力はギアが奏でる“ロボットダンス”にあるのだから。

 子どものころ、付録が欲しくて『小学◯年生』や『科学と学習』を選んだ。付録で分厚くなった雑誌のひもを外し、袋を開け、冊子そっちのけで作り出す。紙や樹脂や磁石やゴム部品だけでなく、上級生向けではモーターも入っていたり。折り線の“やま”“たに”に気を付けて、仕上げにのりを使い(セロハンテープだと仕上げが汚い)、完成後すぐに遊ぶ。転がせ浮かばせ走らせて、あっと言う間に壊れてしまったけど。

 学研の成長の秘密、付録の楽しみを解読してみよう。

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