テリーさんが「このテーマについて、この人にゲスト出演してほしい」と思ってから、(平均)約3カ月後のライブ当日までに、当人と直接会える機会は、決して多くはないようだ。
相手が遠隔地在住だったり、超多忙だったりした場合は、最初の顔合わせ(出演依頼)を除けば、ライブ本番直前の30分だけということもあるという。もちろん電話やメールによる事前のすり合わせはあるだろうが、それにしても初対面に近い相手とのぶっつけ本番みたいなものだ。
時間的にも情報的にも人間関係的にも限定された中で、どのようにしてテーマや出演者の魅力を最大限に引き出していくのだろうか?
「出演依頼で最初にお会いした時と本番直前の30分で、相手とどれだけ信頼関係を構築できるかが勝負ですね。
特に初めてお会いする際など、私はいつもこういう帽子とメガネのカジュアルなファッションですし(笑)、相手からすると『こいつ一体何者だ?』というところから入るわけですから、なかなか大変です。私の場合は出身地でも何でも良いから、とにかく相手と自分との共通項を見出すよう努めます。それを通じて、お互いの間に安心感や親近感を瞬間的に作っていくんです」
そうした安心感や親近感をベースにしつつ、トークショーのステージ上では、どのようにして相手から話を聞きだし、会場を盛り上げていくのだろうか?
「もちろん、事前に一定の情報収集をして、私なりに出演者のことを知った上で本番を迎えるわけですが、ステージ上ではお客さんたちの中で当日のテーマや出演者に関する知識レベルが一番低い人を基準にして、私はそこに合わせて、自分は何も知らないという体で、それもアドリブの体で質問するようにしています。
あくまでもお客さんの1人という立場から、お客さんたちが内心知りたいと思っているであろうホンネの話を引っ張り出すようにしているんです」
コミュニケーション理論に「ジョハリの窓」というものがある。人は誰しも、4つの心の「窓」を持っており、それは次の4つであるとする。
要するに、出演者がそれまでに講演や文章などで自ら語ってきた「自分」というのは、1の一部または全部であり、その人のごくごく一部分を表すに過ぎない。従って、インタビュアーのやるべき仕事は、1を確認し深化しつつも、2を極力引き出し、かつ3を発見して、相手に気付きを与えることだ。そして、さらに4まで明らかにできるなら、インタビュアーとして一流と言っていいだろう。
それを可能にするために必要不可欠なのは、相手の自己開示を促進すること。さらに、それを可能にするのは、インタビュアー自らが心を開いた上で、インタビュー相手の話に対して共感的理解を示すことだ。こうした姿勢があって初めて、お客さんが聞きたいと願う話を相手から引き出せる。
「そうなんですよ。まずは私自身が心を開いていないと相手は決して心を開きません。自分が心を開いた上で、相手のすばらしいところをローアングルからお聞きしていくわけです。そして、その流れの中で、それまで雲の上の存在に見えていた人の、今までほかでは見せたことのなかった素の部分やホンネを、お客さんたちに見せてあげることができれば大成功です。そうすれば、お客さんたちも『そのひと言が聞きたかったんだ』『ああ、来てよかった』と深い満足感に包まれて帰ることができるんですよね」
TOKYO CULTURE CULTUREがユーザーに支持される理由の一端が見えるような話であるが、テリーさんとて、一朝一夕にそれができるようになったわけではないという。
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