アップルの秘密主義は、社員にとって幸せなのかインサイド・アップル(4)(2/5 ページ)

» 2012年03月21日 08時00分 公開
[アダム・ラシンスキー,Business Media 誠]
インサイド・アップル』(早川書房)

 職種の華やかさという点では、営業、人事、顧客サービスといった機能はランク入りもしない。

 アップルでは縦割りの業務が当たりまえなので、驚きが生じるのは縦割りのなかにもうひとつ縦割りができたときだ。

 「アップルに開いたままのドアはない」と元社員は言う。おのおのセキュリティバッジによって一定のエリアにしか入れず、上司が入れない場所に部下が入れることも珍しくない。あるエリアは特別なプロジェクトでもないのに、さらに秘密とされている。その例が、アップルのデザイナーたちが働く、かの有名な工業デザインスタジオだ。入室制限はきわめて厳しく、ドアの奥を見たことがある社員もほとんどいないほどである。

 脳神経学者デイビッド・イーグルマンは、ベストセラー『Incognito』で、秘密重視の文化の有害な影響について書いている。

 「秘密についてぜひ知っておかなければならないことは、秘密保持が脳にとって不健康だということだ」

 人は秘密を誰かに話したいと思う。秘密を打ち明けたいという生まれもっての強い性質がある。アップルは、最初からできるだけ社員に知らせないことによってこの問題を解決しているが、それで社員は幸せかという疑問は残る。

 あからさまな政治活動がないせいで、職場環境は総じて協力的だ。内情通によれば、協力が生まれるのは指揮統制の構造があるからだという。

 「魔法を生み出す鍵は、さまざまな部品をシームレスに統合することにある。それは誰もが知っている」。ソフトウェア・アプリケーションのマーケティングを担当した元副社長のロブ・シェーベンはそう言った。「アップルではつねに複数のチームがいっしょに働いている。協力しなければスティーブに首をへし折られるからね」

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