アップルの秘密主義は、社員にとって幸せなのかインサイド・アップル(4)(3/5 ページ)

» 2012年03月21日 08時00分 公開
[アダム・ラシンスキー,Business Media 誠]

 これはジョブズがまだ生きていたときの発言だ。対するにマイクロソフトは、ビル・ゲイツのもとで激しい政治的内紛がくり広げられているという。これはゲイツが適者生存の結果を重視するということでもある。

 アップルの企業文化は協力的かもしれないが、心地よくもないし、リラックスできるものからはほど遠い。

 「キャンパス内で誰かがだらけていると感じることはない」。アップル上層部につうじた人物は言う。「社員同士の闘いは熾烈で個人攻撃にもなりうる。最高の製品を作るためなら、誰かをこてんぱんにしてもいいというメンタリティがあるんだ」

 そこでアップルの基準の高さが出てくる。

 「完璧を求めるプレッシャーは何よりも強い。そして完璧であることはむずかしい」。元幹部は言う。

 内部にくわしい別の人物は、幹部たちから、緊急の「スティーブのリクエスト」で余暇が台なしになったという話を嫌というほど聞かされた。

 「“休暇中に、担当の製品が基調講演で紹介されることになって、飛行機に飛び乗り、週末のあいだじゅうリハーサルをしなければならなかった”というふうにね」

 アップルの文化の競争的な面も働く。

 「毎日、出社してボクシングの試合をするようなものだ」。かつてサプライチェーン部門の責任者だったスティーブ・ドイルは言う。「ほんのわずかでも気を抜くと、チーム全体のスピードを落とすことになる」

 別の元幹部も、アップルの文化を似たようなことばで説明した。

 「最優秀を競う文化なんだ。できるなかでベストの試合をしなければならないという意識がある。自分は鎖の弱い環になりたくない、会社をがっかりさせたくないという強い願望がね。みんな本当に一生懸命働いているよ。全身全霊を傾けて」

著者のアダム・ラシンスキー(c) Allison Shirreffs

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