なぜこのタイミングで出版社を立ち上げたのか――南原竜樹さんの考え方遠藤諭の「コンテンツ消費とデジタル」論(2/5 ページ)

» 2012年03月21日 15時37分 公開
[遠藤諭,アスキー総合研究所]
アスキー総研

 無謀とも思えるプランを進めている南原氏と、たまたま今年の1月、久しぶりにお会いした。私の親しくしているYさんが、ドイツ人のカーデザイナーが描いた絵のオンラインギャラリーを始めたので南原氏に相談したら(参照リンク)、「ちょっと会いましょう」となったのだった。そのときに、立ち上げた出版事業についても聞いたのだが、「そのことは本に書いたから読んでください」とだけ言われた。

 そうやって、彼の出版社ATパブリケーションの2冊目の本として出たのが、彼の著書『「絶対無理」なんて「絶対」ない!』(南原竜樹著、ATパブリケーション刊)という本である。この本、書名だけ見るといかにも人生論・根性論を書き連ねた本のように見えるが、中身はまるで逆である。南原氏らしい起業家向けの教科書というべきもので、確かに、本の半分くらいのページが「なぜ、いまごろ出版社を立ち上げたか?」について書かれている。

ビジネスはシンプルであれ

 現在では数々の事業を手掛ける南原氏だが、2005年に、彼の会社オートトレーディング ルフトジャパンは経営危機に陥っていた。そのさなかの6月のある日、会社の資産が整理され、借金を背負ってこの後の人生を送ることになるかどうかが決まるというような日に、私は南原氏と一緒にいた。まだ彼の会社の資本金が1000万円くらいだったときに車を買ったのがきっかけで、ごくたまに電話で話すような関係になっていたが、その日は直接会おうという話になった。

 六本木一丁目の泉ガーデンの地下1階で待ち合わせると、南原氏は“私服は一着もない”という例のスーツ姿で待っていた。そして、彼にしては珍しく、「4月末に社員全員に解雇通告をして、5月に社員に挨拶をしたとき、本当に嗚咽で声にならなかった」などという話をした。「たくさん机はあるのに、いるのは自分だけなんだよ。事業を整理するというのは、本当に大変なことだ」とも言った。

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