1500坪の超大型店、ユニクロ銀座は成功するか?郷好文の“うふふ”マーケティング(2/3 ページ)

» 2012年03月29日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

大型店シフトの狙い

 大型店はコストアップで売上効率が下がる。お客さんに訴求するための“売場を作る”品ぞろえが求められるので、在庫負担も増える。陳列の手間も増え、イベントスペースの企画運営も大変。建築上でも防災や環境保全などの設備も増やさないといけない。スタッフも大勢必要で銀座店には520人もいる。

 それでもユニクロは大型店シフトを急ぐ。大型店=500坪、超大型店=1000坪を基準にすると、2012年2月現在の国内直営831店中、大型店+超大型店は143店、そのうち40店は過去1年半にオープンした。大型店は売上のおよそ3割を占めると推定される。

 「大型化の増床分の大半をウィメンズ」にあてるのが、ユニクロの第1の戦略。男性に偏り、女性は母が多い客層をF1層(20〜34歳の女性)にシフトするのが狙いだ。

出典:ファーストリテイリング

 第2の戦略は「原宿店よ、もう一度」。ユニクロの第1期黄金時代は1998年の原宿店出店から。それまでの「ユニクロ=郊外店」戦略を捨て、都心への出店攻勢により1平方メートル当たり年間売上150万円を突破。ところが2003年以降は100万円が壁になった。その壁を壊すのが“都市部の大型店”シフトだ。

 追い風もある。商業不動産の飽和と商業ビルのプロデュース力の低下により、集客力のあるユニクロへのプロポーズが熱心になり賃貸料が下落。コストダウンにつながった。

出典:ファーストリテイリング

 とはいえ銀座はフツーの大型店と何が違うのか?

 私は銀座に行く前に“予習”もした。2010年に増床オープンした800坪の五反田TOC店はゆったり買い物が楽しめる。ワンフロアのファミリー向け構成で、子どもがワーっと走り回っても大丈夫。百貨店進出の先駆けだった池袋東武店は、2011年9月に2フロア・1000坪に増床。ここもファミリー向けの買い回りが便利だ。

 だが、銀座は「年商100億円(1平方メートル当たり200万円)」を目標に掲げる壮大な実験。既存のユニクロとの“差別化”を見ていこう。

目的買いとツレ買いの融合

 8階と9階は年配者のメンズ。半ズボンスーツ提案はステキだが、それが似合う自分はちょっと想像しにくい……。とはいえ、“パンツまとめ買い表示”(「2990円を2本で4990円」など)に釣られる人も結構いるようだ。

 10階の『UU(ユニクロ アンダーカバー)』は注目、ここが私は一番楽しかった。ユニセックスで買えるし、個性的なコーデもできる。クローゼットやタンスを模した演出も楽しい。

 11階はTシャツの「UTストア」。右側が女モノで左側が男モノの配置なのだが、いつの間にかユニセックスも混じるという巧みな陳列。

 12階には女性誌とコラボした限定商品もある。この3つのフロアは「カジュアルのテーマパーク」。フロアを巡れば発見がある。多フロア構成だからこそできるのだ。

集英社とコラボ

 フツーの量販店は「いいものがあれば買おう」で来店する。だが、ユニクロはCMなどであらかじめ“必買品”を決めさせている。例えば、ヒートテックやジーンズ。その上で顧客単価を上げるための「ツレ買い」の仕掛けがこの3フロアとも言える。

 さらにカギを握るのは、スタッフの数と同じくらいあるマネキン。たいていの店のマネキンは「なれたらいいな」を飾るが、ユニクロのマネキンは「今からのあなた」の着やすい提案がある。彼ら彼女らはスタッフがお勧めするコストを下げ、セルフ販売と対面販売の中間を演出する。マネキンをここまで計算して使う店があるだろうか?

 「すごい!」と感心しっぱなしの銀座だが、課題も。スタッフ520人中100人は外国人で英語・中国語・韓国語・フランス語・スペイン語に対応というが、誰が何語を語れるか首に下げているカードからは分かりにくい。帽子に国旗でも付けたらどうか? また試着室が激混み。UUフロアにある「どこでも試着」できる“店内鏡”をもっと増やしてほしい。

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