約束の3キロでは着きそうにないので、HVモードに切り替え、2人は目的のコインパーキングにたどりついた。見回すと、充電スタンドの前が空いている。なるほど、コインパーキングの駐車スペースのうち、一部が充電対応になっているということらしい。
クルマを止めると、2人はクルマを降りて充電スタンドをのぞき込んだ。細長い円柱形で、車のイラストが描かれている。「このクルマ、コインパーキングで本当に充電できるのかなぁ……ホリウチくん、これ、どうやって使うか分かる?」「うーん……あ、ここを開けると中に電源があるのか。でもこれ、鍵がかかってるよ」
充電スタンドのカバー部分には、容易に開けられないように南京錠がかかっている。パーキングに行きさえすればすぐに充電できるものと思っていた2人は途方にくれた。周りを見回しても、人影はない。「どうする?」「どうしようかねぇ」
仕方がないので、充電スタンドに「EV充電器に関するお問い合わせ」と書いてある電話番号に電話をしてみることにした。電話に出たオペレーターにホリウチくんが事情を説明すると、「会員登録は済まされていますか?」と聞かれた。
「駐車場をご利用のお客様には無料で充電スタンドをご利用いただけますが、現状はセキュリティ確保のため鍵をかけているため、会員登録をしていただいているんです」とオペレーター。Webページから登録をすれば、すぐ会員になれるという。
いったん電話を切って会員登録を済ませ、再度問い合わせ先に電話をして会員番号を伝えると、南京錠の解除番号を教えてもらうことができた。「よかった! これで充電できる」と喜んだのもつかの間。教わった通りに南京錠の番号を合わせて鍵を開けると……あれ、この電源の差し込み口には、プリウスPHVの充電コードは差さらない。どう見ても形が違うのだ。
「ねえホリウチくん、これ、どういうこと?」「分からない。分からないけど、とりあえずここでは充電できないということだけは分かる」
「やっぱりG-BOOKの充電ステーション情報は正しかったのね……」電源ガールは苦笑まじりだ。
なぜコインパーキングで充電できなかったのか? 種明かしをすると、一口に「電気自動車用の充電スタンド」といっても種類がさまざまなことが原因だ。
現在目にする充電スタンドは大きく「普通充電器(100V)」「倍速充電器(200V)」「急速充電器(最大500V)」の3種類に分けられる(このほか「中速充電器」もあるが、まだあまり普及していない)。プリウスPHVの差し込み口は家庭用電源と同じ形状で、100V/200Vの充電スタンドで差し込み口が同じ形状のものであれば充電できる。一方、急速充電器はEV専用の3相の差し込み口で、日産のLEAFや三菱自動車のi-MiEVはこちらの形状を採用している。
2人が目にしたコインパーキングの充電スタンドは200Vの倍速充電器ではあるが、形状が異なるEV用の差し込み口だったため、そもそもプリウスPHVはここでは充電できない――というのが真相だったのだ。もちろん、2人はそんなこととはつゆ知らず、がっかりしながら駐車場を出ることになったわけだが……。
「駐車料金いくら?……えっ、1800円! 20分で600円ということは、私たち1時間近くここにいたっていうこと?」「そういうことになるね」「ホリウチくん、1800円ちょうだい」「えっ、僕が払うの?」「あったりまえじゃない。私に払わせる気? 結局充電もできなかったのに」「わ、分かったよ」
財布から1000円札を取り出して電源ガールに渡しながら、ホリウチくんはついポロリとつぶやいた。「考えてみれば、無料で充電できるとはいっても、当然、駐車料金はかかるんだよなあ。目的が駐車じゃなくて充電なら、ガソリンスタンドに行って給油しても同じことだったかも……」
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