『コクリコ坂』が転機に!? 揺れるジブリのビジネスモデルアニメビジネスの今(3/4 ページ)

» 2012年04月18日 08時01分 公開
[増田弘道,Business Media 誠]

ビジネス面での強化

 ジブリが人材面の強化に入ったのは、恐らくコンスタントな作品製作体制を整えようとのことであろうが、同時にビジネス面でも同様の試みがなされているように思える。それが表れているのが2008年に日本のウォルト・ディズニー・カンパニーから代表の星野康二氏を社長として招聘(しょうへい)したことだろう。これによって、より強固なビジネス展開が可能になったと推測されるが、個人的にはディズニーに見られるような海外での展開に期待したいと考えている。

 意外なことかもしれないが、ジブリ作品は実は海外で思うような展開ができていない。ジブリに限らず日本映画全体に言えることだが、次表を見ると北米での興行収入が思いの外、少ないことが分かる。

日本製映画北米興行収入状況(単位:1000ドル、出典:BOXOFFICE MOJO)

 これにはさまざまな理由があるが、1つには海外では日本人が思う以上に表現規制が厳しいことが挙げられる。アニメーションは子どもが見るものとされている国々、特にキリスト教圏やイスラム教圏など日常生活に宗教モラルが浸透している国では、日本のキッズファミリーアニメでさえもセンサーシップ(検閲)問題で苦労しているのである。実際『もののけ姫』は北米でPG-13(13歳未満は保護者同伴)というレーティング指定がなされている。

 その点、『借りぐらしのアリエッティ』がジブリ作品で最も良い数字をあげているという事実は海外での方向性を示唆(しさ)させる。いずれにせよ、大多数の国では「アニメは子どもの見るもの」という社会通念がある中で、年齢層を超えた表現であるジブリ作品をどう浸透させるかの戦略が必要となってくるだろう。

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