1つの寓話から引き出す内容、当てはめる先は、人それぞれに異なる。それを描いたのが次図だ。このようにある比喩を生活や仕事、社会といった他の物事に広げ応用していくのが「比喩の展開」である。
比喩の展開プロセスは、図に描いたとおり3ステップになる。─── (1)抽象度を上げて考え、(2)そこから共通性を見出し、(3)当てはめる。この一連の流れを私は、その形から「π(パイ)の字」プロセスと呼んでいる。
「アリとキリギリス」「ウサギとカメ」「北風と太陽」など、世の中にはさまざまな寓話がある。寓話は子ども向けの話と済ませてはいけない。古典的な寓話は、人生のいつの時期に読んでも、その時々のとらえ方ができる。抽象度を高く上げて、その寓話が内包するエッセンスをつかみ、遠くのものごとに敷衍(ふえん)することは、大人の成熟した思考の姿でもあるのだ。
具体的な情報ばかり摂取していてもこうした思考力は鍛えられない。抽象的な物語に触れ、それを咀嚼(そしゃく)し展開する思考機会に自分をさらさなくてはならない。それはさほど難しいことではない。例えば、文学にせよ絵画にせよ、芸術作品に接し、作者があいまいさの奥に潜ませた本質は何だろうと、感性を開き、思考を巡らせていくことで養われる。(村山昇)
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