「変わり目」こそが、部下育成のチャンスかもしれない部下育成の教科書(5)(3/4 ページ)

» 2012年04月27日 07時59分 公開
[Business Media 誠]

 トランジションの入口の門をくぐった部下は、新たな段階で期待される役割と現状の自分との間のギャップに苦しむ時期がきます。

 その苦しみに耐えることは決して容易なものではありません。なぜなら、段階が変わるトランジションのタイミングでは、仕事や人への向き合い方、価値観、ものの捉え方そのものを問われる場面が出てくるからです。上の段階になればなるほど、それは自らの人間としての器を問われると言っても過言ではないでしょう。

 業務の知識が足りないのであれば、人に聞くなり本を読むなりして勉強しているうちに次第に身につき、時間が解決してくれる部分が大きいものです。

 しかし、仕事や人への向き合い方、価値観を変えていくといったことは、時間によって次第に解決されていくものではありません。自分を変えよう、変わろうという決意のもと、初めて解決に向かうものです。

 これは、直視しようとすればするほど辛いものです。今の自分が持っていないものや、苦手なことを求められ、至らない自分自身の姿を受け止めなければならないからです。できることなら逃れたい、今まで通りやっていたい、得意なやり方でやりたいと、誰しもつい目を背けたくなるものです。

 しかし、そこで目を背けたら何も変わりません。今までと変わらない安定は手に入れることができるかもしれませんが、新しい自分との出会いは生まれないのです。それどころか、周囲からの期待と本人の現状とのギャップは開いたままですから、周りから「あの人はいつまで経ってもダメだなぁ」と言われるようになってしまいます。

失敗体験など「困難な仕事体験」から、学び取るしかない

 では、上司はどうすればよいのでしょうか。

 育成のポイント

 よほど成長意欲の高い部下ならば、至らない自分を受け止めつつ、自らの意思で努力を続けてくれるでしょう。しかし、そのような部下ばかりではないからこそ、マネジャーは苦労しているわけです。

 その答えは明快です。実際の仕事体験から学び取ってもらうしかないのです。

 多くのビジネスパーソンの体験談を紐解くと、トランジションが促進される要因には、仕事場面における最後までやりきった体験によるものと、その過程で上司や先輩など、周囲から受けた関わりによるものがあることが分かっています。

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